2019年の参院選で神戸入りし、公明党候補を応援した安倍首相(当時)
2019年の参院選で神戸入りし、公明党候補を応援した安倍首相(当時)

 自民党と公明党の相互推薦で実現した選挙協力だが、地元の兵庫県連幹部らには不評だった。

「安倍氏、二階氏が公明党の高橋氏のためにマイクを握るなんてなんてありえない。その結果、自民の加田氏は出口調査では、立憲民主党の新人候補に追い上げられ、大苦戦。3万票差まで詰め寄られる薄氷の勝利でした。候補者が競合する区で公明党を推薦しても自民党にメリットはない。それどころか、どちらに票を入れればいいのかと支援者が混乱し、自民党の票が公明党に流れてしまった」

 今年の参院選でも揉めているという。夏の参院選の兵庫で改選となるのは、自民党の候補は末松信介文科相だ。所属は安倍派である。2016年の参院選(定数3)では自民党の末松氏がトップ当選、2位は自民党が推薦した公明党の伊藤孝江氏、3位は日本維新の会の片山大介氏だった。末松氏と30年来の付き合いがある自民党の県議はこう語る。

「末松氏は県議から参院に転身後は戦いで勝ってきている。だが、昔から選挙には弱く、苦労してきた。維新の勢いがすごく、末松氏は公明党との関係でかなり悩んでいると聞く」

 安倍派の国会議員は公明党との相互推薦についてこう疑問を呈する。

「昨年の衆院選では、日本維新の会が大阪だけではなく、兵庫県でも小選挙区で1議席、比例で8議席も獲得した。参院選ではさらなる上積みもありえます。末松氏は待望の入閣を果たしたばかり。現職閣僚が万が一、選挙区で敗れるようなことはあってはならない。安倍派として全力で当選させなければならない。自民党の票が公明党に流れると、大変なことになりかねない。今回は相互推薦はなしでもいいと思う」

 ここに来て自民党と公明党の亀裂は深まるばかりという。

「自公がギクシャクしているのは、明らかに維新の脅威によるものです。最後は相互推薦すると思いますが、かなり深刻です」(政府関係者)

 自民党では現在、愛知県連、神奈川県連、福岡県連の3つの選挙区で公明党との相互推薦が微妙な情勢になっているという。

 自民党の鈍い反応に公明党の山口那津男代表は記者会見(17日)で、こう不満をぶちまけた。

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腹に据えかねている公明の山口代表