ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、隣国ポーランドでは難民支援に奔走する日本人男性がいる。自宅に難民を受け入れ、難民になった母親のために現地のNGOとともに託児所の開設を目指している。AERA 2022年4月18日号は男性に話を聞いた。
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戦争の長期化とともに深刻な問題となっているのが、ウクライナからの難民だ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、人口約4200万人のウクライナで、ロシアの侵攻後に国外に逃れた市民は413万人に上る(4月1日現在)。これほど大勢の人が一度に難民となるのは、第2次世界大戦後では初めてとなる。戦いに備えるため、18~60歳の男性は原則、出国を禁止されている。難民の9割は女性と子どもだ。
「行き場を失った母親や子どもたちを見るに堪えなかった」
ポーランド南部のカトビツェに住む東優悟(あずまゆうご)さん(25)はそう話す。ウクライナとの国境から西へ約350キロのところにある都市だ。
「難民を受け入れたい」
沖縄県出身。婚約者のポーランド人女性(25)と息子(4)の3人でこの街で暮らす。大学院で経済学を学び、4月から地元企業でも働くはずだった。
それが、ロシアのウクライナ侵攻で一変した。駅は、命からがら逃れてきた女性や子どもたちであふれ返った。子どもは寒さで震えながら、駅構内の一角に敷かれた毛布の上で寝ていた。自分の息子と同じくらいの年齢だった。
放っておけない──。
そう考えていると、婚約者が「難民を受け入れたい」と提案してきた。
今はキーウから戦火を逃れてきた1家族を自宅に受け入れ、衣食住を提供している。母親(35)と娘(8)、息子(3)の3人だ。電車を乗り継ぎ数日かけて国境を越え、やっとの思いでポーランドにたどり着いた。東さんの難民受け入れのフェイスブック(※)の投稿を見て、連絡をしてきたという。
ポーランドは、ウクライナからの難民を最も多く受け入れている国だ。UNHCRによると約240万人に上り、ポーランドの全人口の約6%に相当する。