日本でも流行しているFIRE(経済的自立を確保して若いうちに早期退職すること)関連で「4%ルール」という言葉がよく出てくる。運用資産を定率4%で取り崩して、その範囲内で生活すれば元本も減りにくく、老後まで乗り切れる。これが「日本で広まっている」4%ルールだろう。
老後の資産活用のスペシャリスト、フィンウェル研究所の野尻哲史さんは「その(4%ルールの)解釈は大きな誤解」と指摘する。
野尻さんによると、そもそも1994年に米国のウィリアム・ベンゲンという専門家がはじめて唱えた4%ルール(通称)は、リタイア時点の資産総額に4%を掛けた「定額の」資金を、運用を続けつつ毎年引き出すというものだという。
なお4%ルール関連では1998年に米国トリニティ大学の教授により発表された論文も引き合いに出される場合がある。
「4%ルールは『定額引き出しの金額を決めるためのルール』であり、『運用残高の4%を毎年、定率で引き出そう』という考え方ではありません。定額引き出しのほうが月々の生活費の計画を立てやすいので、米国でもニーズが高い。
そこでベンゲン氏は資産を株式50%、債券50%で30年間運用しながら定額で引き出した場合、元本が0円にならないためには、引き出し額を資産残高の何%に設定すればいいかを検証しました。その結果、導き出された数字が4%なのです」
ベンゲン氏の研究を否定しているのではない。巷(ちまた)の解釈が違っていることを正しただけである。
さて、野尻さんが長年の研究から提唱しているのは「3%の運用を目指し、残高の4%を引き出す」という「定率引き出し」である。
投資対象としては、年3%前後の運用利回りを10年以上続けている投資信託(以下、投信)が望ましい。基準価額の上下動が激しすぎるものは、リタイア後の運用にふさわしくない。
「『3%運用・4%引き出し』だと年1%ずつ元本が減ります。運用後半に残高が少なくなっても定率引き出しを続けていたら、受け取るお金がさみしくなります。そこである程度の残高があるうちに定率引き出しをやめ、定額か定口に切り替えることも検討します」