
「大阪都構想」の看板は、約1万7千票差の僅差でたたまれることとなった。大阪で高く評価される大阪維新の会の看板政策だったが、2連敗を喫した背景には何があったのか。AERA 2020年11月16日号では、2度にわたる市民の「審判」を、住民投票のエキスパートが読み解いた。
【グラフ】維新、自民、公明…大阪都構想「支持政党別」の賛否はこちら
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「大阪市を廃止し特別区を設置すること」の是非を市民に問うた2度目の住民投票(11月1日投開票)は、2015年の前回同様、僅差で否決となった。結果を受けて、大阪維新の会の代表であり大阪市長でもある松井一郎は、近々、代表職を降り、市長の任期切れをもって政治家を辞めると言明した。その後任となるであろう吉村洋文・大阪府知事は、反対多数が決まった直後の会見で、顔を強張らせながらこう語った。
「反対派の方の大阪市を残すべきだという熱量が、僕らより強かった。僕たちが掲げてきた『大阪都構想』はやはり間違っていたんだろうと思います。僕自身は(都構想は)必要だと今でも思ってますが、僕が政治家として『都構想』に挑戦することはもうありません」
思い切った発言だが、これはその場しのぎの言葉ではなく、吉村の本音だろう。この間、大阪中を駆け回り「賛成に投票を」と市民に訴えてきたものの、この先は「都構想」という縛りから解放されたいという心理が、会見での彼の表情から窺えた。
■維新はまとまるのか
維新の絶対的なリーダーだった松井が退いたあと、吉村が代表を務めて維新はまとまるのか。党の参謀として選挙、住民投票を仕切ってきた今井豊・大阪府議(大阪維新の会幹事長、日本維新の会副代表)に聞いた。
──幹事長は続けますか?
「僕を幹事長に指名した松井さんが代表を辞めるのだから、僕の任期も終了。後任は(代表に就任するであろう)吉村さんが組みやすい者を指名すればいい」
──松井・今井の重鎮がそろって抜けると維新は機能不全に陥ると不安な議員もいるが。
「多少の混乱はあるでしょうが、若返りを図るええ機会。守りに入らず変化を繰り返すことでうちは成長してきたから大丈夫」
──次の市議選や市長選挙に不安はないと?
「油断はしないが不安はない。今回、住民投票で『反対』に投票した市民の多数は『(都構想はNOだけど)改革は進めてくれ』という思い。改革ができるのはうちだけで、自民・共産の候補に負けるとは思わないし、立憲なんて眼中にない」