武漢市内の薬局入り口の貼り紙。「マスクを着けていない方は入店をお断りし、従わない場合は市政府の通告に準じて対処します」と記されている/1月23日、同市の住民提供
武漢市内の薬局入り口の貼り紙。「マスクを着けていない方は入店をお断りし、従わない場合は市政府の通告に準じて対処します」と記されている/1月23日、同市の住民提供
中国本土での新型肺炎の感染者数(AERA 2020年2月10日号より)
中国本土での新型肺炎の感染者数(AERA 2020年2月10日号より)

 世界中で感染が拡大する新型コロナウイルス。日本でも感染者が確認されるなか、問われるのは危機管理だ。AERA2020年2月10日号から。

【図を見る】衝撃!中国本土での新型肺炎の感染者数はこちら

*  *  *

 発生源の中国湖北省武漢市の周先旺市長は1月27日になって、中国国営中央テレビのインタビューに「地方政府は情報を得ても、権限が与えられなければ発表することはできない」と、情報公開の遅れの原因の一端は中央政府にあると主張している。

 中国問題グローバル研究所の遠藤誉所長は、中国政府とWHOの間で、不適切なやりとりがあった可能性を指摘する。23日午前から始まった武漢市の封鎖に関するものだ。

 封鎖によって現地に取り残された多くの人たちがパニック状態にあるのは報道の通りだ。市当局によれば、1千万人を超える市内の人口のうち、500万人が封鎖から逃れて市外に移動したという。

 遠藤所長によると、封鎖の通告があったのは実行の約8時間前の23日未明だった。封鎖そのものの是非は別として、結果的に8時間というリードタイムの間に500万人もの市民が武漢を離れたことによって、封鎖の意義は薄れたことは間違いない。

 遠藤所長は、封鎖に関する情報を中国政府側がWHOに事前に渡すことによって、緊急事態宣言の回避を狙ったのではないか、と見ている。

 それが仮に事実なら、「人の命を守るためにあるべき姿ではない」と、遠藤所長は厳しく批判する。

 翻って、日本政府の危機管理はどうか。現政権は、「森友問題」や「桜を見る会」で不都合な事実をこれまで隠し続けてきた。今後、気がかりなのは二つの日程だ。

 日本は、7~9月に東京五輪・パラリンピックの開催を控える。02年11月に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)は終息するまでおよそ8カ月かかった。予定通りに開催できるのか、国会でも野党議員の中には危ぶむ声が出始めているという。

 政治評論家の有馬晴海さん(61)も、「慎重に判断すべき」と考えている。

次のページ