今回のセブンペイの不正利用騒動は、昨年12月のペイペイの不正利用騒動と同様、日本のスマホ決済の普及の足かせとなるのは確実だ。

 ペイペイの不正利用は、クレジットカード会社にカード所有者本人しか知らない任意のパスワードを事前に登録する「3Dセキュア」を導入していないクレジットカードもチャージに使えるようにしていたことが主な原因。当時、同様の弱点は他のサービスにもあり、ペイペイの派手なキャンペーンが犯罪組織に狙われた側面もあった。

 これに対してセブンペイは、セキュリティー認識不足が最大の原因の可能性が高い。

 セブン&アイは、すでに一定程度普及が進んでいるナナコのポイント還元率を引き下げてまでセブンペイへの移行を促し、普及を進める考えだった。一体なぜなのか。

 セブン&アイに限らず、各社が自前の決済サービスを導入するのは、顧客の購買データを入手すれば、商品開発や販売促進などに生かせるためだ。ただ、セブン&アイでその役割を担ってきたナナコは、日本のスマホ市場の半分を占めるiPhoneで使えない。セブンペイには、iPhoneユーザーを取り込むという大きな狙いがあったとみられる。実際、セブンペイの登録件数は150万件に上り、順調に普及が進むかに見えたところで、派手にコケた格好だ。

 競合するスマホ決済事業者幹部はセブンペイの問題点をこう指摘する。

「グループ各社の連携が必要なサービスなのに、情報が分断されていたため、セキュリティーの欠陥を見つけられなかったのではないか」

 セブン&アイ本体が主導権を握り、グループ全体でサービス改善を進めない限り、さまざまな課題に対応を急ぐ中で、肝いりの金融サービスのセブンペイの正常化は望めない。(ライター・平土 令)

AERA 2019年7月15日号