やや少なくなったとはいえ、3千万人という数は途方もない規模だ。

 より問題なのはここからだ。デジタル上の鍵「トークン」が盗まれた、といわれてもいま一つピンとこないが、実は、「トークン」があれば、アカウントを乗っ取ったり、氏名や性別、出身地などの個人情報を盗んだりすることができるのだ。

 9月末時点では、FB社は「実際に個人情報が流出したのかどうかは調査中」と説明していた。

 だが10月12日、FB社が発表したのは、「鍵を悪用され、全世界で2900万人分の詳細な個人情報が盗まれていた」というショッキングな内容だった(図参照)。

 鍵を盗まれた約3千万人のうち、約1500万人は、氏名と連絡先の情報が盗まれていた。連絡先とは、携帯電話番号やメールアドレスのことだ。

 また、約1400万人は氏名と連絡先だけでなく、さらに詳細な情報を盗まれていた。生年月日、性別、婚姻の有無や交際状況を示す「交際ステータス」、最近ネット上で訪れた場所、最近検索した内容、出身地や居住地、職歴、学歴、宗教、使用言語、ユーザーネームまで、詳細かつ多岐にわたる。

 実名が前提のFBで、利用者が書き込んでいたプライベートな内容が、ハッカーに大量に盗まれたのだ。

 この「2900万人」という数字をどうみればよいのだろうか。そして日本の利用者にはどの程度の影響があるのだろうか。

 FBは全世界で22億人の利用者がおり、そのうち日本では2800万人に上る。FB社は「2900万人」の被害者の分布を聞かれても、「幅広い地域」としか答えていない。

 単純には比較できないものの、あえて試算すれば、「2900万人」は、FBの世界の利用者の1.3%に当たる。そこから考えれば、日本の2800万人の利用者のうち、36万人程度は、今回の個人情報流出の被害に遭っていてもおかしくない計算になる。

●情報盗まれたら「後の祭り」事後的な防衛策しかない

FB社は、被害者には、それぞれの人のFB上で、「近日中に通知する」としている。被害者は自分のFBを見ていれば、いずれ通知が画面に現れる。

 自分が被害者の場合はすでに情報は盗まれており、いわば「後の祭り」だ。携帯やメールに知り合いを装って連絡してくるような不審な人物には十分注意する、といった事後的な防衛策しかないといえる。生年月日などをパスワードに利用している人も多いだけに、そうした場合には、パスワードをより複雑な内容に変更することも大事になってくるだろう。

次のページ