いたるところで権威が事実を踏み潰そうとしている。 なぜこんな時代になったのか。権威者たちの「ご飯論法」の前に、事実を諦めていいのか。虚偽に対抗するには、ファクトを示し続けるほかはなさそうだ
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哲学者の内田樹さんは現状をこう分析する。
「Honesty pays in the long run.というように、正直は長い目で見て引き合うもの。短期的に見れば、ウソはその場をしのぐことができる。現政権を見ていると、3日や1週間というタームで、説明が事実でないと明らかになる。国家100年の計ならば、膿を出し切り真相を解明するのが適正ですが、次の選挙を考えれば、真相解明を遅らせ、水掛け論に徹したほうが有利です」
つまり、「損得の判断基準が 短くなった」。社会全体が株式 会社化し、5、6年先の見通ししか求めていない。国立大学で すら、6年程度の中期計画しか要求されない現状がある。
「背景には、日本が国としての ビジョンを失ったことがあるでしょう」(内田さん)
高度経済成長期は戦後の復興と再生が、小泉政権時代は国際社会で政治大国を目指す、というプランがあった。が、バブル崩壊後、経済は低迷し、国連の常任理事国入りはかなわず、第1次安倍政権が始まる前の05年頃には完全に展望を失った。
「対米従属をして、対米自立を果たすことも失敗に終わった。目的が失われ手段だけが残り、目的なく従属する米国のイエスマンとして、20年近く漂流している。国のかたちと国民の生き方は同期せざるを得ません。上意下達圧力に抵抗できず、長いものには巻かれろという諦めが日本社会に蔓延しているように 思います」(同)
では、人々は現状をどう捉えているのか。
朝日新聞の5月の世論調査では、加計問題の「疑惑が晴れた」と考えているのは 6%に過ぎず、「疑惑は晴れていない」が83%、政権がモリカケ問題に「適切に対応していない」と回答した人は75%に上る。対して、安倍内閣の支持率は36%、支持しないと答えたのは44%だ。