記者会見を終えた蓮舫氏。安倍政権への追及を強めるべきタイミングでの辞任に、涙を流しているようにも見えた (c)朝日新聞社
記者会見を終えた蓮舫氏。安倍政権への追及を強めるべきタイミングでの辞任に、涙を流しているようにも見えた (c)朝日新聞社
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 民進党・蓮舫代表の突然の辞任劇。「泥船」の党を投げ出した感も否めない。トップの退場は野党第1党の「液状化」の始まりなのか。

*  *  *

「遠心力」

 7月27日に民進党の蓮舫代表が開いた辞任記者会見でのキーワードだ。国会内の控室に白いジャケット姿で現れた蓮舫氏。会見では時折笑みを浮かべ、どこか吹っ切れたようにも見えた。

「どうすれば遠心力を求心力に変えることができるのか──」

 そう考えて、辞任を決めたという。

 通常、辞任会見で言及されるのは求心力の低下だが、2016年9月に野党第1党では30年ぶりに女性の代表となった蓮舫氏の場合、「師匠」と慕う野田佳彦氏を幹事長に抜擢した新執行部人事の段階で求心力に陰りが生じていた。野党転落時の首相だった野田氏に強いアレルギーを示す党内グループの相次ぐ離反を招いたためだ。

●何を旗印に闘うのか

 一橋大学の中北浩爾教授(政治学)は言う。

「新体制発足時に挙党態勢を構築できなかったことで遠心力が働いてしまったのです」

 7月2日投開票の東京都議選では、旧民主党として戦った4年前の15議席を大きく下回り5議席と惨敗。党内から上がった「二重国籍問題」を問う声は、遠心力がさらに強まっていることを内外に示した。その後、野田氏が幹事長辞任を表明。後任をなかなか決められず、辞任の引き金を引いた。

 遠心力を拡大させた要因は、ほかにもある。

 政策面で響いたのは、支持母体「連合」との「原発ゼロ」をめぐる交渉の不調だ。蓮舫氏は「2030年原発ゼロ」方針を目指して今年3月の党大会で表明しようとしたが、断念を余儀なくされた。党内部からは、

「何を旗印に闘っているのか、わからなくなっているのでは。このままだと、都議や国会議員も都民ファーストに流れ、党の液状化が始まってしまう」(都内の市議)

 という声も漏れた。

 民進党は政策と人事の両面を刷新し、遠心力を食い止められるのか。中北氏は懐疑的だ。

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