初対面の印象を左右する笑顔。笑うことが得意な人もそうでない人にも効果がある、「数値化」でき「再現可能」な笑顔をつくれる時代がやってきた。
「80パーセント笑顔を5秒キープ!」
今年7~10月末まで、日本航空の客室乗務員約5千人を対象に“笑顔測定アプリ”の試験運用が実施された。出航前、チーフの指示に従いアプリを使って顔エクササイズを行い、表情筋をほぐして接客力に磨きをかけた。
「今まで乗務員同士で笑顔を確認しあっていたため、ダイレクトに言えないこともありました。タブレットだと、人が指摘しにくいところも言ってくれる」
そう話すのは、客室本部客室品質企画部の横野三知子さん。10年間客室乗務員として接客してきたが、笑顔一つで信頼感や気品を演出できることまでは意識していなかったと言う。
「ただ笑顔をつくるだけではなく、場面ごとに色々な使い方があるということが、このアプリを通して認識できました」
●笑顔講座をアプリに
アプリを開発したのは化粧品メーカーの資生堂。6月、これまで行ってきた「笑顔講座」をデジタルコンテンツ化した。講師を務めるビューティークリエーションセンタービューティーソフト開発グループマネージャーの高野ルリ子さんは、のべ6千人に笑顔の大切さを伝えてきた。2008年にスタートした講座発足のきっかけは、ある中学校教師の一言だった。
「最近の小中高生は表情がとっても乏しいんです」
背景には感情を上手に表情に表せなかったり、「ごめんなさい」のやりとりもメールで行ったりする生徒が増えている現状があった。
「今まで培ってきた顔や表情の研究成果を生かせないか」
高野さんのその想いを具現化したのが笑顔講座だ。
「笑顔を科学的に考えると笑顔自体にも数値化できる『再現性』が要求されます」(高野さん)
真顔を0%、口角を最大限上げて歯を見せない笑顔を100%、歯を見せた笑顔を120%とし、その3タイプを基準に画像処理で表情を7段階に分けた。
とはいえ、同じ笑顔でも、参加者や講師の体調によって数値に変化が生じてしまう。ムラのない均質な笑顔講座を届けたいと、同開発グループの石川智子さんが中心となり、2年がかりでアプリを開発。時と場所を選ばず個人で笑顔トレーニングを行い、その結果を記録することも可能になった。過去と比較して、笑顔の習熟度も確認できるのだ。
●表情で声も変わる