新聞通信調査会が2008年から毎年実施する「メディアに関する全国世論調査」によると、日本では新聞、テレビの信頼度は2016年に過去最低を記録したが、アメリカでのニュースメディアに対する不信感はもっと深刻である。
「今のメディアは、国民からこれまでにないほど目の敵にされている」と語るのはジャーナリスト保護委員会(CPJ)のジョエル・サイモン事務局長。
その一因としてトランプ大統領のレトリック(巧みな言葉)を彼は挙げる。そもそもトランプ氏は大統領になる前の選挙キャンペーン中からメディアを「嘘つき」「いかがわしい奴ら」などと攻撃し、就任後は自身に批判的な報道機関に対しては「フェイクニュース」、そして「アメリカ国民の敵」というレッテルを貼って米国民の中のメディアに対する敵対心を煽ってきたとサイモン氏は指摘する。
同委員会によるとトランプ氏が大統領に就任してからアメリカにおけるジャーナリストへの攻撃が急増していて、2017年から2018年の2年間だけで45人のジャーナリストが逮捕され、88人がデモの最中などに身体的な危害を加えられたと報告している。
「ジャーナリストとして事実を伝えたいという思いで現場にいたのに、本当にショックでしたし、心が痛みました」
そう語るのはカリフォルニア州でフォトジャーナリストとして活動するジュリー・リオポさん(28)。トランプ氏が大統領に就任した年に行われた地元支持者による集会を取材中に彼女は襲われた。
リオポさんはロサンゼルス郊外で2千人近くのトランプ支持者が集まる中、アメリカ国旗やトランプ支持のプラカードを掲げた参加者の写真を撮っていたところ、突然白人の中年女性参加者が「フェイクニュース!」と叫びながら彼女のカメラに向かって旗を振り下ろしてきて、それを守ろうとした彼女は腕にアザができるほどの怪我を負った。同行していた地元紙の記者も別の参加者から顔面を何度も殴られ、全治1週間以上の怪我を負ったという。