しかしながら、ひとたび著名人が「私はガンです」と公表した瞬間、メディアを含む世間全体が、即座にその人の足跡を辿るような態勢になるのは何なのでしょうか。あくまで私の個人的かつ不謹慎な見解ですが、どこか『来るべきクライマックス』に向けて「悲壮なドラマの幕が開きました」的な印象を受けてしまうのです。他人様の『闘病』を『物語』として第三者が(たとえ見守り応援しているとしても)捉えるのって悪趣味だなと。
事実、私たちは今まで数多の壮絶な悲劇、復活劇を見てきました。そして病気や闘病にまつわる様々な情報が共有されている現代社会。それらによって人々の心の中に妙な『シナリオの雛形』が存在してしまっているのであれば、そんなものは今すぐ捨てるべきです。確かに著名人の病気がニュースの『ネタ』になるのは致し方ないとは思います。それでも自ら公表したことを盾にして、「素晴らしい選手だった」とか「一世を風靡したアイドルだった」なんて過去形で扱ってしまっている人たちが、某大臣の失言を非難するなどお門違いもいいところ。当事者たちは粛々と闘うしか道がないのですから。私もメディア側に身を置くひとりとして、そのような話題に接した際にはただ静かに祈れる人間でありたいと思うばかりです。
それでも花の82年組(シブがき隊・石川秀美さん・早見優さん・松本伊代さん・小泉今日子さんなど)が結集してエールを送る姿は、見ていて泣けてきます。きっと堀ちえみさんも心強いことでしょう。一日も早いご回復をお祈りしています。
※週刊朝日 2019年3月8日号