ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「ちびまる子ちゃん」を取り上げる。
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私は昭和50年生まれです。14歳になる年の1月に元号が平成に変わり、気付けば30年。たいてい人は、自分の生まれ年を起点に物事を捉える傾向があるので、私にとっての平成は紛れもなく『昭和の続き』です。さらには「これは今から何年前か?」や「この人は自分と何歳違いか?」などを計算する際は西暦を用いた方が分かりやすいため、結局最後の最後まで『平成○年』というものに無頓着なまま来てしまいました。きっとこの先も無頓着に平成の世を生きるのだろうと思っていましたが、平成が終わることとなった今、無性に平成が愛おしい今日この頃。
平成になって以降、しきりに口にしたり耳にするようになったのが「昭和っぽい」という言葉です。古臭い的な意味合いもあれば、懐かしさを表す代名詞でもあり、言うならば平成の30年間は、『昭和っぽさ』を追い求め慈しんできた30年でもあるような気がします。平成生まれの若者ですら、常に『昭和』という概念がそこかしこに渦巻く中生きてきたわけで、その象徴のひとつが『ちびまる子ちゃん』ではないでしょうか。平成だからこそ際立つ昭和の味わいに、世間は共感したり安らいだりする。ちびまる子ちゃんの昭和っぽさは、究極の『平成っぽさ』なのです。平成が終わり、『ちびまる子ちゃん』を観る時、私たちはきっと「ああ、平成!」としみじみすることでしょう。だけどそこに描かれているのは、めくるめく『昭和っぽさ』のオンパレード。そう考えると、平成って何とも“いじらしい”時代だと思いませんか?