核兵器は、たった一発で多くの人々を殺戮する史上最大の破壊兵器だ。現在、世界にはそれが約1万5千発あるといわれている。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞報道局記者・谷田邦一さん監修の解説を紹介しよう。
【写真】広島と長崎に落とされた原爆の模型はこちら* * *
■平和をリードするはずの大国が核兵器を手放さない
1945年、広島と長崎に核兵器(原子爆弾)が1発ずつ投下された。ふたつの都市は一瞬のうちに焼け野原となり、20万人以上の人々が亡くなった。核兵器の破壊力はそれほどすさまじいものだった。
それなのに第2次世界大戦後、戦争に勝ったアメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国の5大国は核兵器の開発に力を入れていくことになる。また5大国は、核兵器をつくる国をこれ以上増やさないために、「核不拡散条約(NPT)」を結び、自分たち以外の国が核兵器をつくることを禁止した。核兵器を持ち、脅し合うことで、実際に使わなくても自国を守ることができるという考えからだ。
■保有国以外で進める「核兵器禁止条約」の今後
NPTは、5大国だけに核兵器を持つことを認める一方で、保有国には、核軍縮を誠実に交渉する義務を負わせた。けれど、実際には核軍縮は進んでいないことに、核を持たない国やNGOが「自分たちでできることをまず始めよう」と、昨年、国連で核兵器は非人道的なものとして、核兵器の法的な禁止を求める交渉を開始した。7月に採択され、現在122カ国が支持しているが、核保有国や、日本のようにアメリカの「核の傘(※)」に入って核攻撃から身を守っている国々は反対している。
(※)核保有国の核兵器による抑止力が、同盟国を守ってくれるという考え方。
■「核兵器」ってどんなもの?
<原爆の1000倍の威力 水素爆弾>
水素爆弾(水爆)は、最も軽い原子・水素の仲間を核融合させたときのエネルギーを破壊力にする爆弾。起爆装置には原爆を使用。
<広島・長崎に落とされた 原子爆弾>
原子爆弾は、ウランやプルトニウムといった重い原子を核分裂させたときのエネルギーを破壊力にする爆弾。1945年、広島と長崎に落とされた。
【メモ】
アメリカとロシアは2010年に、核弾頭をそれぞれ18年までに1550発に減らすことなどに合意する「新戦略兵器削減条約」に調印しました。