■大統領への弾劾訴追は2例目
朴氏の大統領の任期は2018年2月まで。だが、韓国の国会では野党3党が12月3日、朴氏の行為は憲法や法律に違反しているとして弾劾訴追案を提出した。訴追案は9日、国会議員300人のうち、234人の賛成で可決された。
朴氏やチェ被告らをめぐる新たな疑惑が次々と報じられるなか、週末ごとに朴氏の退陣を求める大規模なデモが韓国各地で開かれた。韓国の世論調査機関「韓国ギャラップ」によると、朴大統領の支持率は11月に4%まで下がり、不支持率は93%。19~29歳と30代の支持率は0%となった。
怒った国民の民意が、国会の弾劾訴追に向けた動きを後押しした。朴氏は弾劾訴追案の可決後、「大きな国家的な混乱をきたし、国民に心から申し訳ない」と謝った。
国会で弾劾訴追案が可決されたあと議決書が大統領府に提出され、その時点で朴氏の大統領の権限は停止された。この段階では、まだ弾劾は成立していない。実際に弾劾するかどうかは憲法裁判所が決める。弾劾されれば朴氏は辞めさせられて、新しい大統領を選ぶ選挙が行われる。
朴氏は当初、一連の混乱を受けて17年4月に辞任する与党案を受け入れる考えを示していた。だが、国会で弾劾訴追されたため、実際にいつ辞めるかどうかは不透明な状況だ。
憲法裁判所が辞めさせる必要はないと判断して弾劾訴追を退けた場合は、朴氏は大統領の職務に復帰する。そうなると、その後いつ退陣するのかをめぐって、韓国の政治の混乱は続きそうだ。
韓国の大統領に対する弾劾訴追案の可決は、04年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領に続いて2例目となった。盧氏は、当時の実質的な与党だった「開かれたウリ党」を支持する発言を繰り返し、公職選挙法に定められた政治的な中立義務に違反したなどとして弾劾訴追された。憲法裁判所は約2カ月後、盧氏の一部の違法行為は認めたものの、辞めさせるほど重大ではないとして弾劾訴追を退けた。盧氏は大統領の職務に復帰した。(解説/朝日新聞国際報道部・金順姫)
※月刊ジュニアエラ 2017年2月号より