小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』では、毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている。昨年話題になった「夫婦同姓」問題は、結局12月に最高裁判所が「違法ではない」という判決を出している。そもそも夫婦同姓はいつから始まって、どの国で行われているのか、本誌より紹介したい。
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もし、自分の名字が明日から変わったら、どう思う?
日本では、結婚すると、妻が夫の名字に変えることが多い。今の民法に、「夫婦は、夫または妻の氏(名字)を称する」(夫婦同姓)という決まりがあるからだ。妻の名字を選んでもいいが、夫婦の96%が夫の名字を選んでいる。
明治時代の民法には「家制度」があり、夫のほうが妻より地位が高かった。戦後は、新しい憲法に従って夫婦は平等になったが、明治時代の名残が今も続いている。
でも、生まれてから慣れ親しんできた名字を変えることが寂しいと感じる人もいる。別の名字になったら、仕事先の相手がわかってくれないかもしれない。だから、どちらも名字を変えなくていいように、結婚届を出さずに夫婦として生活している人たちもいる。
そんな「事実婚」の夫婦や、結婚後も元の名字を通称として名乗っている女性たち5人が、この民法の規定は、男女平等や個人の尊重を定めた憲法に違反するとして、国に損害賠償を求めた。
この裁判で、最高裁判所は昨年12月、「夫婦同姓は憲法に違反しない」という判決を出した。名字には「家族の呼び名」という役割があり、名字を変える不利益は、「通称を使うことである程度緩和される」と述べられた。
ところで、「夫婦は必ず同じ名字にならなければならない」という決まりは、ほかの国にもあるのだろうか。2010年に政府が調べたところ、「日本のほかに見あたらない」という結果だった。夫婦の名字は、同じでも別でもいい国がほとんどで、二つの名字を結合してもいい国もある。子どもの名字の決め方もいろいろだ。
日本でも、父母の離婚で、親と名字が違う子どもがいる。親の再婚で、弟や妹が別の名字になることもある。家族の形も変化した。今は夫婦別姓を選べないが、若い人には賛成が多い。きみたちが結婚するころには、変わっているだろうか。
(解説・杉原里美/朝日新聞社会部)
※月刊ジュニアエラ 2016年4月号より