南極で20度超の気温が観測されたことが2月に話題になった。南極が、暖冬だった日本の気温より高いことに驚いた人も多いだろう。地球温暖化の影響なのだろうか。小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」5月号では、専門記者が解説した。
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2月9日、南極で20・75度が観測された。3日前の6日には18・4度(当初発表の18・3度から修正)。南半球では夏とはいえ、地球上で最も寒い南極が、暖冬の日本より暖かいことに驚いた人は多いだろう。地球温暖化で南極も暑くなっているのか。
南極は広い。日本の37倍の約1400万平方キロメートルもあるので、寒さにも大きな違いがある。年平均気温は、沿岸部にある日本の昭和基地ではマイナス10度程度だが、内陸部ではマイナス50度以下にもなる。
今回観測された二つの記録も、昭和基地と同じように沿岸部だった。
20度超えは、南米に近い南極半島北端沖にあるシーモア島で、ブラジルの研究チームから報告があった。世界気象機関(WMO)に認定されれば、南極半島沖のシグニー島で記録された1982年の19・8度を抜いて、南緯60度以南の「南極圏」での観測以来最高となる。
18・4度は、シグニー島から100キロメートルほど南の南極半島北端にあるアルゼンチンのエスペランサ基地で観測された。こちらも認定されれば、2015年3月に同基地で記録された17・5度を抜き、「南極大陸」では過去最高となる。
南極が急激に暖かくなっているのは間違いなさそうだ。WMOによると、世界の平均気温は250年ほど前から約1度上がったが、南極半島の北端では過去50年で約3度上昇したという。
科学者は、このまま温暖化が進むと今世紀末に海面が61~110センチメートル上昇する可能性があると指摘している。主な原因は、南極とグリーンランドの陸にある氷の融解だ。南極の氷がすべて解けると海面は40~70m上昇するといわれる。
昨年の世界の平均気温は過去140年の観測史上2番目に高く、今年1月は過去最も暖かい1月だった。南極の異常高温は、日本を襲った大型台風などの気象災害、オーストラリアで相次いだ森林火災などと関連している可能性がある。(朝日新聞編集委員・石井 徹)
※月刊ジュニアエラ 2020年5月号より