群れで長距離を飛翔し、農作物を食い荒らすサバクトビバッタが東アフリカで大発生。食糧危機が広がるのではないかと危ぶまれている。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」6月号では、アフリカのバッタ大発生についてリポートした。

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「アフリカの角」と呼ばれる、アフリカ大陸東部のエチオピア、ケニア、ソマリアなどにまたがる地域で、サバクトビバッタの大発生による深刻な農業被害が起こっている。国連食糧農業機関(FAO)によると、バッタによる食糧や生活の危機としては、エチオピアやソマリアでは過去25年、ケニアでは過去70年で最も深刻だという。

 このままバッタの被害を食い止めることができないと、食糧事情が急速に悪化して、新たな国際紛争も招きかねないと専門家は気をもんでいる。現在、世界は新型コロナウイルスのパンデミックに苦しんでいるが、サバクトビバッタの大発生からも目を背けるわけにはいかない。

●4千万匹が一日に3万5千人分の食糧を食べる!

 サバクトビバッタは、日本にもいるトノサマバッタと同じ仲間に属する昆虫だ。砂漠などの乾燥した環境を好み、ふだんは北アフリカからアラビア半島、インドにかけての地域に生息している。ところが、大発生したときには大群をつくって長い距離を移動し、移動した先々で作物を食い荒らす。最近では、2003年10月から05年9月にかけて西アフリカを中心に大発生した。群れは国境を次々に越えて移動しながら拡散し、20カ国以上に被害をおよぼし、農業被害は25億ドル(約2700億円)に上った。

 サバクトビバッタは、つねに大群をつくるわけではない。ふつうのときは、幼虫も成虫もほかの個体との距離を保って生息している。この状態のバッタは「孤独相」と呼ばれ、幼虫は緑色や褐色、灰色など周囲の環境に溶けこむ色をしている。

 ところが、大雨が降って餌となる草がたくさん生えるなど、いくつかの条件がそろうと大発生する。個体どうしが互いに触れ合うことが多くなり、こうした環境下のバッタは普段よりも大きな卵を産み、その卵からは、黒い幼虫がふ化する。その幼虫が混み合った環境で育つと、黒にオレンジや黄色が交じった体色の幼虫になる。この幼虫から育った成虫は、群れをつくって餌となる植物を求め、長い距離を移動する。このような特徴をもつようになったバッタは「群生相」と呼ばれる。

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上浪春海
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