新型コロナウイルスだけでなく、今後も新たな感染症が流行するかもしれない。これまでの歴史からどんなことが学べるのだろうか。小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」8月号では「感染症の歴史から学ぶ 新型コロナとのつきあい方」を特集。ジュニアエラのキャラクターのコビンが、『感染症と私たちの歴史・これから』の著書がある飯島渉・青山学院大学文学部教授に聞いた。

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――ボクたちは、「医学」と「公衆衛生」という、感染症と闘うための二つの知恵を身につけたんだね。今はどんな対策をしているの?

 ふだんからさまざまな予防対策が行われているよ。上下水道を整備してコレラなどの流行を防いだり、予防接種を行ったり。学校は、予防対策のポイントになっている。集団生活を送る学校は、感染症が流行しやすい環境だからね。だから、過去に流行した感染症のうち、特に警戒が必要なものは学校感染症に定められていて、流行すると休校になったりするんだよ。学校で、手洗いやうがいの大切さを学ぶのも、重要な感染症対策だ。これまでの感染症には政府が研究を支援して、ワクチンや薬の開発を推進し、スムーズに提供してもいるよ。

――そんなふうに対策をしているのに、今回の新型コロナウイルスのような大流行が起きてしまうのはなぜ?

 現代は多くの人が国境を越えて飛び回るから、今回の新型コロナウイルスのように、人類がこれまで経験していない感染症を抑え込めず、感染拡大が始まると、たちまち世界中に広がるんだ。医学の力でワクチンや、決定的な治療薬が開発されるまでは、公衆衛生によって拡大を防がねばならない。今回、日本では、専門家会議の分析に基づき「人と人との接触を8割削減」という目標が掲げられ、私たち一人ひとりが行動を変えて、感染拡大を防いだんだね。

――新型コロナウイルスの対策は、国によって違ったね。韓国や台湾に比べて、日本は体制が遅れていたって聞いたよ。

 2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が世界的に流行したとき、台湾では感染が拡大し、37人の死者が出た。韓国は15年にMERS(中東呼吸器症候群)で38人の死者が出た。この経験を生かして、政府が対策を進めていた成果が、今回、新型コロナウイルスでも出たんだ。一方、日本はこの二つの感染症では患者を出さなかったんだ。

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AERA編集部
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