「学習院初等科では、細かいルールのもとで玉入れゲームを、東洋英和女学院小学部では、少人数でマットを囲んで立ち、創作ダンスを行ったようです。密を避けるという制限のなか、約束を守ることができるか、協調性や積極性など、各校『ここだけは外せない』という部分をチェックできるよう、考査に工夫が光りました」(吉岡さん)

 今年は感染症対策のノウハウも蓄積されたため、行動観察は実施される可能性が高いそうだ。
 
 また、中止も心配されていた親子面接は「マスクを着けてソーシャルディスタンスを取る」といった対応の学校がほとんどだったようだ。自粛期間中の家庭での過ごし方について多く聞かれたという。
 
 手先の発達や巧緻性を見る「指示制作」の課題では、折り紙の使用が目立った。「使い捨てできるもので制作させて、セロハンテープやはさみなど道具の使い回しによる感染を避けるのが狙い」(吉岡さん)。ティッシュペーパーで作った「こより」をつなげて、「釣り竿」を作るという課題を出した学校もある。
 
 ペーパーテストに影響はあったのだろうか。感染への配慮から、これまで行われてきた試験官と1対1の「個別審査」を取りやめて、ペーパーテストに切り替えた伝統校もあったという。

 また、吉岡さんは「ペーパーや指示制作の考査で、タブレット端末や動画を用いる学校が前年と比べて倍増した」と指摘。慶應義塾幼稚舎では、受験者にiPadが配られ、課題の動画を巻き戻すなど、自由に操作できたという。

「座席が後方で聞こえづらいといった口頭指示の不平等感がなくなり、発問ミスも防げるため、運動のお手本を動画で見せる学校も増えてきました。動画を使用した効率化・公平化の流れはコロナ禍が収束しても続くでしょう」(吉岡さん)。

 入試で初めてタブレットを見て舞い上がったり戸惑ったりしないよう、普段からある程度は慣れておく必要がありそうだ。

■生活面や季節感の理解「基本」が大事 

 入試の内容が変化した一方で、整理整頓、片付け、しつけなどの生活面や、日本の伝統文化、季節行事などの「基本」が重視されることは変わらない。

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