コロナ禍による混乱で、波乱含みとなった2021年度入学の小学校受験。応募者数の減少も懸念されていたが、首都圏(1都3県)の合計志願者数の推移を見ると、前年の2万753人から2万2689人へと1割近くも増加した。保護者の意識や学校側の対応はどう変化したのか。『AERA English特別号「英語に強くなる小学校選び2022」』では、小学校受験入試の専門家に話を聞いた。
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少子化が進むなか、志願者数が年々増加している私立小学校。2021年度の入試はコロナ禍で受験者数が減るかと思われたが、蓋を開けると「右肩上がり」の傾向は変わらなかった。
小学校受験の専門サイト「お受験じょうほう」で最新データを発信する野倉学さんは「緊急事態宣言下の昨年4~5月は、全国の学校が休校に。公立校のコロナ対応が進まない一方で、オンラインで授業をいち早く再開するなど、私立校の柔軟な対応が目立ちました。公教育への不安を背景に、これまでお受験を考えていなかった保護者も、私立小に注目するようになったのでは」と分析する。
40年近く、小学校受験の現場指導に携わってきたジャック幼児教育研究所理事の吉岡俊樹さんは、「以前と比べて学校側からの情報公開が進んだことも、受験者数増加に寄与している」と語る。
「ひと昔前の伝統校は、入試情報を大々的に告知することはありませんでした。1995年に慶應義塾幼稚舎が学校説明会を始めたのをきっかけに、ほかの私立小も情報開示を進めるように。その結果、受験者層に広がりが出るようになりました」(吉岡さん)
■「行動観察」の中止など入試内容が変化
学校によって異なるが、小学校入試では、7割の学校が採用するペーパーテストをはじめ、行動観察、絵画制作、運動、面接が基本的な課題となる。コロナ禍で、入試内容はどう変わったのだろうか。
大きく変化したのは、集団での接触が起きやすい「行動観察」のテスト。「代表的な首都圏の私立小学校46校を調べたところ、7校で行動観察が取りやめに。人数や規模を縮小した学校も多かった」と吉岡さん。行動観察を実施した学校でも、接触や、物の貸し借りをしないような配慮がなされたという。
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