来年の中学入試について、森永さんは次のように予想する。
「来年は、ほぼ今年と変わらない受験者数になると予想しています。今年は安全志向の結果、難関校がそろって志願者数を減らす結果となりました。難関校が2年連続で志願者数を減らすことはこれまでにもなかったことから、来年は積極的に難関校を狙う動きが戻ってくると思っています」
■東海3県の受験率は堅実に上昇
東海3県(愛知、岐阜、三重)はここ10年、毎年堅実に受験率が上昇している。中学受験の主要地域となる名古屋市は、小学6年の児童数が減っているにもかかわらず、のべ受験者数が増えている。日能研東海(名古屋市)企画情報部長の藤原康弘さんは、その理由をこう話す。
「愛知県は公立が強いと思われがちですが、実は伝統校もあり、中学受験は根強い人気です。やはりコロナ禍の対応で、私立に気持ちが傾いた保護者も多かったようです」
トップ校の東海(名古屋市)は、昨年の1020人から1050人に志願者数が増加。
「東海に対する、保護者や受験生の信頼は厚く、人気は断トツです」(藤原さん)
共学のトップ校である滝(愛知県江南市)は、今年から名古屋市にも受験会場を設けたことで、昨年の1797人から1868人と志願者数を伸ばし、過去10年で最多となった。伝統女子校の金城学院(名古屋市)は、今年から思考力入試(専願)を導入した。事前に思考力セミナーを受講し、本番の試験では文章を読んで自分の考えを書く。受験者数181人に対し合格者数31人と、6倍近い倍率となった。この入試が牽引し、四科入試・英語利用入試も含めて受験者数を大きく伸ばした。
■岐阜の人気校は県内と名古屋市からの受験生がともに増加
岐阜県の学校はほぼ例年並みだったが、トップ校の鶯谷(岐阜市)は367人から425人に増加。岐阜東(岐阜市)も99人から132人に増えた。
「岐阜市は名古屋市から電車で20分と通学圏内です。増加している学校は、名古屋市からの受験生と、地元で中学受験を目指す児童と、ダブルで増えています」
三重県は愛知県からの受験者も多い高田(津市)が554人から569人に、昨年共学になった海星(三重県四日市市)の前期が92人から113人に増加した。しかし、県全体の志願者数は減少している。
「三重県は南北に広く、岐阜とは事情が違い、名古屋からだと通いにくい面があります。三重県全体の小学6年児童数が減少しており、それに伴った減少といえるでしょう」(藤原さん)
東海地区では愛知県を中心に、教育に熱心な家庭が中学受験に参入しており、今後も増えそうだという。
「中堅校のレベルが上がって難しくなっています。志願者数が増えれば増えるほど、優秀な子どもたちが受験するようになりますから、東海地区の中学受験の市場は、今後も有望だと思います」(藤原さん)(文/柿崎明子)