暗唱することで読解力がさらにアップ

「音読で一番大切なのは“自分の声を聴く”こと」と先にお伝えしました。脳は耳で自分の声を聴くことで受けた刺激を「記憶系脳番地」につなげていくからです。加藤先生は次のように話します。

「そこがしっかりしていないと、記憶として定着しないのです。記憶に残らないから、どうしても一字一字を追うような読み方になり、読んでいてもおもしろくなくなってしまう。だから音読では出す声に強弱や抑揚をしっかりつけて脳に残るような読み方をすることが大切です。そうすれば脳はその読み方を記憶し、黙読でも頭の中で強弱や抑揚をつけながら読めるようになるので、理解が進むのです」

 大人は文章を読むとき、「理解しながら記憶していく」ことが自然とできていますが、子どもは脳番地のネットワークが未熟なので、「記憶していないと理解が進まない仕組み」になっています。頭に入っていないと理解できないということです。

「繰り返して読むことが大事というより、一度頭に入った状態で文章を理解し、考えるというプロセスを繰り返すことが大切です。何度も音読して、その結果、文章を見なくても読める(=暗唱できる)ようになるといいですね。目で字を追わない分、頭のなかで自由に文章のイメージを広げて味わう余裕が出てきます。そうすることによって理解もさらに深まり、脳がぐんと成長する。読解力ももちろんアップします」

 効果的な音読法で紹介した「音読は短い文章がいい」というのも、この「読んで、理解して、味わう」の一連の流れを実感しやすいから。そして「助詞を意識する」のは、最後までハッキリ読むためと、声に強弱をつけることで脳を刺激するためなのです。

 このメカニズムを知ると、音読はもっと楽しくなりそうですね。

(文/船木麻里)

「脳の学校」代表・加藤俊徳先生/脳科学者。小児科専門医。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家であり、「脳番地トレーニング」の提唱者。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)など脳科学に関する著書多数。

※AERA with Kids2022春号より転載

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