「表現」を大切にするフランス語の授業

 フランス語の場合、アルファベットは26文字しかなく、カタチも難しくない。普通の子だったら10回くらい書けば覚える。ただしアルファベットの組み合わせで発音が変わるため、単語として覚えなければならない。したがって、フランス語を書くには、たくさん文章を読んでたくさんの単語に触れる必要がある。本を読むことこそ勉強なのだ。

 またフランス語は文法がややこしい。「あなた」と「わたし」で動詞の書き方が違うし、主語は1つか複数によって動詞も形容詞も変わるし、過去形は4種類あるし、女性名詞と男性名詞もある。よって、国語という1つの授業でくくらず、書く授業、読む授業、文法の授業などと細かく分かれている。詩の授業もあり、ここで表現することを学ぶ。

 日本では表現を学ぶ機会が比較的少ないと感じる。演劇をとり入れた授業もあるけれど、表現するのとは少し違う。人前で何かを発表することには違いないが、日本で演劇といえば覚えたセリフをくり返すことだからだ。自分の意見を作文し人前で発表する機会はフランスのほうが多いだろう。

 だからフランスの授業はすばらしい、と言いたいわけではない。フランスでは自分で考えて表現することを重視する一方で、それにつまずく子もいる。表現することを重視しすぎると、基本的な知識がないまま成長していく子がたくさん出る。

 フランスの言語学の専門家によると、小学校を卒業してもフランス語を正しく読めない子どもが12~15%もいる。また、概ね読むことはできるものの正確に意味をつかめない17歳〜18歳の子どもの割合は10%を超えているともいう。ある程度、ベースの知識があってこそ、表現の幅は広がるのだ。

フランス人記者、日本の学校に驚く

西村カリン

フランス人記者、日本の学校に驚く
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西村カリン
西村カリン

1970年フランス生まれ。ラジオ局やテレビ局を経て、1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在は「ラジオ・フランス」および日刊リベラシオン紙の特派員。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』(大和書房)など。

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