子どもにとっては深刻な場合も

――わが子が「運動会に出たくない」と言ったら、どのように対応したらいいでしょう?

 ここは、思い切って休ませてあげたほうがいいです。親は「頑張ることで成功体験につながるのでは。頑張らせたほうがいいのでは」と思うかもしれませんが、子どもにとっては大人の想像以上に深刻に悩んでいる場合があります。ですから、お子さんがつらそうだったら「まあまあ、休んだっていいんじゃない」と寄り添ってあげることが大切です。

 なかには先生から「クラスで一致団結してやります。なるべく練習を休ませないでください」などと言われて困ってしまうケースもあるでしょう。ですが、まずは親御さんがお子さんの気持ちをしっかり受け入れて、「うちの子はかなり厳しそうなので、このへんで勘弁してあげてください」と対応することも大切だと思います。

――せっかくの行事、楽しく取り組んでほしいなという気持ちもあります……。

 親御さん自身には、運動会が楽しかった、つらかったけどいい思い出になったという経験があるかもしれません。ただ、「お子さんは必ずしもそうではない」という前提がとても大事。「親の気持ち」と「子どもの気持ち」は違うかもしれない。それを念頭に置いてほしいです。

新しい環境で気持ちも追いつかない

――5月というとクラス替えしたばかり。あまり親しくない子とも協力しなければならない点も大変でしょうか。

  まさにそうなんです。運動会ってもともとは秋の行事でしたよね。10月と5月では、5月にやるほうが圧倒的にモメやすい。まだクラスの人間関係ができていなくてギクシャクしてしまったり、子どもたちはクラス替えのことを「担任ガチャ」「クラスガチャ」とか言ったりするほど、新しい環境に苦しんでいる子が多い時期なんです。

 そんな状況で「練習するぞ」と言われても、気持ちが追いつかない。親や先生が楽しい行事だと思っていても、子どもたちは普段と違う環境で大変な思いをしている可能性が大いにあるので、苦しんでいたらちょっと距離を取らせてあげるのも親の仕事かなと思います。

 行事に参加しないと後ろめたいかもしれませんが、お子さんの気持ちを優先することが大切。そんなふうに考えてみてはいかがでしょうか。

(構成/布施奈央子)

石井志昂さん

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布施奈央子
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