【ヒント6】体を動かしながら英語を身につけるのは〇
英語学習には「トータルフィジカルレスポンス(Total Physical Response/TPR)」という教授法がある。自分で体を動かしながら英語を身につける方法で、たとえば「Raise your hands.」という声かけに対して両手を上げることで「Raise」が「上げる」、「hands」が「両手」という意味をつかむ。「Stand between the lines.」であれば、実際に二つの線の間に立つことで「Stand」や「between」を体感できる。
「子どもたちは体の動きでなんとなく意味をとらえていくので、英語の歌も体を動かすものがよりよいですね」(正頭さん)
「劇を通して英語を覚えるという方法もあります。体を使いながらだと楽しいですし、覚えやすいと思います」(磯崎さん)
【ヒント7】英会話教室選びは、グループレッスンと「発音の奇麗さ」を重視しよう
言語は親を含め周りとの関わり合いから身につけるもの。磯崎さんは「英語を使うコミュニティーに入るのがベター」とし、英会話教室はグループレッスンを推奨する。わからなくても、周りの子たちの行動を見て意味を推測できるからだ。「推測力は言語習得に欠かせません」(磯崎さん)
正頭さんは「ネイティブの講師にこだわる必要はありませんが、小さいうちには発音の奇麗さが大きな条件になる」という。「国籍は関係なく、発音が奇麗なうえ、やりとりのなかでより自然な英語をフィードバックできる講師が成長を促してくれるでしょう」(正頭さん)
【ヒント8】日本語と英語の両方に接しても混乱しない。抽象的な概念は「英→日」に訳してあげて
小さいころから日本語と英語に接していると、子どもが混乱するのではないか。正頭さんによれば、そうした不安は杞憂だ。「多少混乱する時期はありますが、小さいうちから2言語にふれているほうがバイリンガルになれる可能性は高い」(正頭さん)
磯崎さんは「食べ物や乗り物など、具体的な物事を指す単語の場合は、英語のままでその意味を理解できる」としたうえで、「親の役割は、子どもがどれほど母語になる言語の力を持っているかを理解し、次に新しく入ってくる言語とつないであげられるかが大事」と話す。抽象的な概念のときには特に英語を日本語に訳してあげるのも親の務めだという。
【ヒント9】無理に取り組ませたり間違いを叱ったりすると〝英語嫌い〟が加速する
英語を流暢(りゅうちょう)に操れるようになってほしいのはあくまで親の希望だ。子どもが自ら望んでいるものではない。「子どもの行動基準はシンプルで、楽しいからやる、楽しくないからやらないなんです」と正頭さん。英語に興味を示さないのに、無理やり取り組ませるのは逆効果だと主張する。特に強制的に書かせるのがNG行為で、学習ドリルのように感じると、後ろ向きになってしまうそうだ。
磯崎さんも「外国語ですから間違って当たり前。間違いを叱ると子どもはやる気を失います」と話す。同時に、小さいうちに丁寧に直してあげると、のちのちネイティブが不思議に思わない英語が話せるようになるという。
【ヒント10】「好きなこと」×「英語」は英語に対するモチベーションを高めてくれる
正頭さんは、デジタル版ブロック遊び「Minecraft(マインクラフト)」を活用した独自の英語授業を評価され、2019年に「グローバルティーチャー賞トップ10」に選ばれた。「遊びの楽しさで英語に対する意欲を引っ張り上げる方法です」(正頭さん)
正頭さんも磯崎さんも「好きなこと」×「英語」の効果は大きいという意見で一致する。最近はサッカーやプログラミング、ピアノを英語で学ぶ習いごとが増えている。「好きなことですし、コミュニティー、ボディーランゲージ、そしておそらく日本語ですでに理解していることを英語で聞くという三つがそろっているので、理想的な学びだと思います」(磯崎さん)
(取材・文/菅野浩二)
朝日新聞出版