イスラエルで10月7日、パレスチナ自治区・ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスからの大規模攻撃があり、紛争状況が続いている。これまでに双方の死者は1500人超に上り(9日時点)、紛争が長引く懸念も広がる。イスラエル・エルサレム在住で、AERA dot.コラム「金閣寺を60回訪れたイスラエル人教授の“ニッポン学”」を連載中のニシム・オトマズキン教授(国立ヘブライ大学人文学部長)が、現地から緊急寄稿する。
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7日早朝、ガザ地区を実効支配するイスラム過激派グループであるハマスが、南部国境沿いのイスラエルの都市や農業コミュニティーに衝撃的で致命的な攻撃をし、イスラエル南部で恐ろしい出来事が繰り広げられています。
猛攻撃は、イスラエルの都市に発射されたロケットの執拗な爆撃から始まりました。同時に、約1000人のハマス過激派がガザとイスラエルを隔てるセキュリティーフェンスを突破し、バイクと白い四輪駆動車を使ってイスラエルに侵入しました。中に入ると、彼らは暴力の波を解き放ち、家に侵入し、男性、女性、子どもを無差別に殺害しました。彼らは、爆発物を投げつけたり、隠れている人々を怖がらせるために家を燃やしたり、残忍な戦術をとりました。
ガザ地区周辺では、約3000人の若いイスラエル人らが参加する音楽祭が進行中でした。彼らは周辺で展開されている悲劇に気づかず、至近距離で発砲し始めたガザからのテロリストに囲まれました。祭りの参加者は銃撃から逃れようとして、パニックが続きました。悲劇的なことに、そのうち260人が命を落とし、遺体は砂の上に残されました。銃撃は非ユダヤ人でさえ免れませんでした。タイからの農業労働者12人が殺害され、11人がガザに誘拐されました。
別の事件では、近くを旅行していたイスラム教徒のアラブ人家族が攻撃されました。母親と2人の子どもが撃たれ、父親は負傷して入院しました。
恐ろしい攻撃の結果、900人以上のイスラエル側の死者が発生し、少なくとも2500人が負傷しました。生存者の証言が増え続けていくのと比例して、影響を受けたコミュニティーでは怒りと悲しみが募っています。
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