・テストの点数を上げたい。なぜなら、受験に役立つから
・受験していい学校に入りたい。なぜなら、いい企業に就職できそうだから
・いい企業に入りたい。なぜなら、安定して幸せに生きていけるから
もし、そうした抽象的な未来への不安を解消するために保険をかけるような「逆算的な意識」があるならば、「それは古い考え方かもしれない」と疑ってみてください。
従来のやり方では現代社会を生き抜くのは困難だという危機感から、日本の教育は探究学習へとベクトルを向け直しつつあります。これはつまり、テストで点を採る「学力」から、どんな状況においても自ら「学ぶ力」へ価値観がシフトしてきたということです。
変化が激しく先を見通せないからこそ、子どもの将来について何かしらの安心を得たいと考える保護者が多いのもわかります。しかし、これまでの価値観の中に留まっていれば安心が保障されるわけでは決してありません。
また、このような逆算思考では、誰も幸せになれないということもポイントだと思います。逆算思考とは「いつかの未来のために今を犠牲にする」考え方だと言い換えることもできるからです。中学受験のために子どもの小学校6年間の楽しみを犠牲にすべきと考えるのは、たとえば、親自身がマイホームを買うため、子どもにいい教育を受けさせるためと、今を楽しむことを犠牲にして頑張ってきたことが影響しているのかもしれません。
しかし、その結果として、日本の社会には笑顔がなくなり、エネルギーがなくなったとも言われます。引きずられるように会社へ向かう大人の姿も多くなり、ついイライラを子どもたちにぶつけてしまえば、親子関係も悪くなる一方です。
中学受験を選択するというのは、親自身の価値観を問いなおすことでもあるのです。
矢萩 邦彦