地球温暖化が進み、現在は「気候危機」とも言える状況に直面している。人類はこの危機をどう防げばいいのか。小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」3月号は、「ストップ! 気候危機」を特集。朝日新聞で環境問題を担当する石井徹編集委員が解説する。

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――地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」が始まったの?

 今年から本格的にスタートしたんだ。協定では産業革命以前に比べて世界の平均気温の上昇を2度未満にすると決めたが、各国の温室効果ガスの削減目標では足りない。もし各国が自分の目標を達成できたとしても、3度以上になる可能性が高いんだ。

 2年前には1・5度未満にしないと危ないという科学的評価が出た。1・5度の実現には、さらに大幅な削減が必要だ。2030年までに世界の温室効果ガスの排出をほぼ半減させ、50年には「実質ゼロ」にしなければならない。このためグテーレス国連事務総長は、各国に削減目標の引き上げを促している。

――国際社会はどう動いているの?

 昨年9月には、ニューヨークの国連本部で気候行動サミットが開かれた。12月には、スペインのマドリードで国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)があった。どちらも最大のテーマは、各国の温室効果ガスの削減目標をどう引き上げ、世界全体の排出量をどう減らしていくかだった。

 COP25で、国連は84カ国が、削減目標の引き上げの表明か、検討をしていると発表した。だが、ヨーロッパのいくつかの国以外は、太平洋の島国や南アメリカ、アフリカ諸国がほとんどで、排出量も小さい。世界最大の中国以下、アメリカ、インド、ロシア、日本という5大排出国に目標を上げる気配はないんだ。

――世界の足並みがそろわないのはなぜなの?

 アメリカがパリ協定からの離脱を表明し、中国やインドは途上国としての権利を主張するなど、気候危機に対してリーダーシップを発揮しようとする国が見当たらないからだ。

 CO2を大量に排出する石炭火力発電所の新設を国際的に批判されている日本も、方針を変えていない。主要国で前向きなのは「50年実質ゼロ」を打ち出しているヨーロッパ連合(EU)ぐらいだ。

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石井徹
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