アメリカで銃の暴力に反対し、銃の規制強化を求める高校生らの運動が活発になっている。3月24日には首都ワシントンにアメリカじゅうから約80万人が集まり、銃規制を呼びかけるデモを行った。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞ニューヨーク支局・金成隆一さんの解説を紹介しよう。
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きっかけは2月14日、南部フロリダ州の高校で17人が犠牲になる銃乱射事件が起きたことだ。元生徒の19歳の容疑者がライフルを持って高校に侵入し、1階の3教室で立て続けに乱射。さらに四つ目の教室へ移動して発砲。その後、2階に上がって五つ目の教室で発砲し、さらに3階に上がったところでライフルを捨て、1階に戻って校外に逃げた。約6分間の犯行で、高校生や先生、部活動のコーチなど計17人が犠牲になった。
アメリカの学校では銃乱射事件が繰り返されてきた。1999年にはコロラド州の高校で生徒2人が教師や生徒たち13人を射殺。2007年にはバージニア州の大学で学生が32人を射殺。12年にはコネティカット州の小学校で20歳の男が小さな子どもを含む26人を射殺した。
事件が起こるたびに、銃規制を厳しくすることが議論されたが、アメリカでは銃は自分の身の安全を守るものという考え方も根強く、規制は進まなかった。今回のフロリダ州の事件でも、容疑者のライフルは、購入時18歳だった本人が合法的に手に入れたものだった。
こういった現実に高校生たちが怒っている。事件の翌日の夜、高校近くで追悼集会があり、多くの若者が声を上げた。「なぜ、短い時間で大勢を殺せるライフルが簡単に買えるんだ?」「なぜ、銃の購入を厳しく制限する法律がないんだ?」「17人の犠牲を無駄にするな!」。「政治家の皆さん、銃規制の現状維持に動くなら、再選はない」との訴えも起きた。11月に連邦議会の中間選挙があり、銃規制に賛成するか、反対するかを争点にしようという動きもある。
著名人も運動に賛同している。俳優のジョージ・クルーニーさんは家族でデモに参加し、活動に50万ドル(約5400万円)の寄付を表明。映画監督のスティーブン・スピルバーグさんも、妻と「フロリダの若い生徒たちがリーダーシップを発揮している」と高校生たちの行動をたたえ、同額を寄付すると発表した。
政治家はどう対応するのか。トランプ大統領は事件直後、銃の購入の最低年齢を18歳から21歳に引き上げることに賛成していたが、どこまで本気なのか、疑問視されている。今後の若者の運動のゆくえと、トランプ政権や連邦議会の反応が注目されている。(解説/朝日新聞ニューヨーク支局・金成隆一)
※月刊ジュニアエラ 2018年5月号より