衆院本会議を終え記者の質問に答える安倍晋三前首相。捜査の網は着実に狭まりつつある/11月24日午後 (c)朝日新聞社
衆院本会議を終え記者の質問に答える安倍晋三前首相。捜査の網は着実に狭まりつつある/11月24日午後 (c)朝日新聞社
AERA 2020年12月7日号より
AERA 2020年12月7日号より

「桜を見る会」の前夜祭費用を、安倍前首相側が補填していた疑惑が再燃している。安倍前首相の関係者に検察による捜査の手が及んでいる。その情報が明るみに出たのは、読売新聞のスクープだった。リークしたのは誰なのか。AERA 2020年12月7日号から。

【図を見る】開催費補填は公職選挙法違反にあたるか

※【特捜部が追う「桜を見る会」問題の布石は2月のある文書 辻元清美議員「政権吹っ飛ぶ」と身震い】より続く

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 東京地検特捜部による捜査はどう進展するのか。ある検察関係者は、この安倍事務所による前夜祭の開催費補填が、公職選挙法が禁じる有権者の買収に該当するか、そして、安倍前首相がその実態をどこまで把握していたかが今後の焦点と話す。

「買収と認められれば、仮に逮捕、起訴されるのが秘書だけであっても、有罪になれば連座制が適用されますので本人もアウトです。本件は当初、秘書を送検した上で不起訴で決着をつける方向に動いていたのですが、安倍前首相と近かった黒川弘務・元東京高検検事長が賭け麻雀騒動で失脚したことによって、特捜部の動きが正反対に変わったんです」

 検察関係者はこう続ける。

「誰が読売新聞にこの情報をリークしたのか。それができるのは杉田和博官房副長官しかいないのでは。菅首相は、安倍前首相が自分を差し置いて『外交の最前線に立つ』と周囲にぶちまけているのが許せなかった。党内でまことしやかにささやかれる“安倍3選”の声を封じる上でも、この特捜の動きは好都合だったんです。菅首相の指示があったのか、杉田副長官との阿吽の呼吸かは分かりません」

 当の菅首相は11月25日の参院予算委員会で、立憲民主党・福山哲郎幹事長の質問に対し、「捜査機関の活動内容に関わる事柄でありますので、お答えは差し控えさせていただきます」との答弁を連発。ただし、行政府と立法府の関係として、安倍前首相が嘘の答弁を国会で続けてきたことをどう思うのかという質問に関してのみ、こう踏み込んで発言した。

「仮定について私はお答えする立場じゃないと思いますけど、事実が違った場合は、それは当然、私にも答弁をした責任がありますから、そこは対応するようになるという風に思います」

 特捜部は年内にも決着をつけると意気込んでいるようだが、これで秘書だけを逮捕して「はい、終わり」というのでは絶対に国民は納得しない。そして、日本は三権分立の国だ。司法による捜査とは別に、立法府である国会で安倍前首相自身がこのつきつけられた疑惑について説明する責任があることは言うまでもない。(編集部・中原一歩)

AERA 2020年12月7日号より抜粋