この春、日本各地の動物園で、動物の赤ちゃんがたくさん生まれた。新型コロナの影響で休園する時期とちょうど重なり、今年は生まれたての姿を見ることができなかった。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」7月号では、動物学者・今泉忠明さん(日本動物科学研究所所長)の解説で、動物の赤ちゃんたちを紹介した。

ミーアキャットの赤ちゃん。秋吉台サファリランドで(写真/朝日新聞社)
ミーアキャットの赤ちゃん。秋吉台サファリランドで(写真/朝日新聞社)

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 日本の動物園は、春、出産ラッシュを迎えてとてもにぎやか。今年1~4月にもたくさんの動物の赤ちゃんたちが生まれた。

 春生まれの動物が多いわけは、四季のある日本では、春に出産したほうが、子どもが生き延びやすいからだ。春から夏は自然界でも食べ物が得やすいし、気温も下がらないから安心だよね。

 同じ春といってもフンボルトペンギンの生息地・南半球の春は9月ごろ。熊本市動植物園のペンギンの孵化時期は6~7月と11~3月の年2回あるというから、ペンギンたちはすむ場所に合わせて出産時期を調整しているのかもしれないね。

 動物園にはアムールトラなど絶滅危惧種を繁殖させる役割もある。全国の動物園は協力して動物の「戸籍簿」を作成し、血統ができるだけ交わらないようにしているよ。たとえば旭川市 旭山動物園で生まれた3頭のアムールトラの両親、キリルとザリアは、アメリカの動物園からやってきた個体。新しい血を継ぐ赤ちゃんたちは、繁殖面でも期待されているんだ。

 小動物は3カ月ぐらいで大きくなってしまうので、赤ちゃんらしい姿が見たいなら、できるだけ早く見にいこう。大きさの変化だけでなく、羽が生えそろってきたり、模様がはっきりしてきたり、泳ぐのがじょうずになったり、どんどん成長する過程を追いかけるのもおもしろいよ。

【アムールトラ】
オス2頭、メス1頭(名前は未定)/2月1日生まれ/旭川市 旭山動物園(北海道旭川市)
父はキリル(11歳)、母はザリア(10歳)。7頭出産したうち3頭が元気に育った。5月上旬の体重は約12kg。トラは模様が一頭一頭違うので模様で個体を見分けるが、小さいうちは見分けられない。2歳ぐらいで「成人」し、オスは約180kg、メスは約120kgになる。6月の体重は20kgほどの見込み。半年ぐらいは、子どもらしさが残る。

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今泉忠明
日本動物科学研究所所長 今泉忠明

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