新型コロナウイルス感染で不安が広がる中、人類はこれまでどのように感染症と戦ってきたか振り返ってみよう。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」5月号では感染症との戦いの歴史を詳報した。

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 人類の歴史は、病気を引き起こす細菌やウイルスなどの病原体が体の中に入って増える「感染症」との戦いの歴史ともいえる。

 病原体ははるか昔から地球上に存在し、人類とともに生きてきた。そして、人類の文明が始まったころから、人々の集まるところにも現れて感染症を引き起こし、数えきれないほどの人の命を奪ってきた。一国の歴史だけでなく、世界の歴史の流れまで変えることすらあった。

 ただ、当時は原因がわからず、天体や星、太陽の動きによって病気が起こるとか、人の悪い行いに対して神が罰を与えたなどと考えられていた。

 19世紀後半以降、科学の進歩により、感染症の原因が病原体であることがわかった。そして科学者たちの絶え間ない努力により、感染症に対抗するための2種類の「武器」を人類は持つようになった。ひとつは、感染症にかかる前、感染の予防策として使用するワクチン。もうひとつは、感染症にかかった後、治療に使用する抗生物質などの薬だ。この二つの武器により、多くの人の命が救われた。一方で、今、世界で広まっている新型コロナウイルスのように有効なワクチンや治療薬が見つかっていない病原体も数多くあり、人類と感染症の戦いは今も続いているといえる。

 人類が感染症とどのように戦ってきたのかを見ていこう。

●「敵」の正体がわからない

<人類の10分の1が死んだ 天然痘>
 確認された中で世界最古の天然痘患者はエジプト王のラムセス5世。天然痘は、貿易や戦争の発生とともに世界中に広まった。インドでは、女神・シータラーが天然痘の神として知られる。天然痘にかかるのはこの神が怒って人に乗り移るからといわれ、人々は拝めば病気が治ると信じていた。

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AERA編集部
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