産経新聞社がフジ・メディア・ホールディングス傘下入りの動きを加速している。経営不振からの救済策を後押ししたのは、安倍首相の一言だった。AERA 2019年10月28日号に掲載された記事を紹介する。
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10月初旬、産経新聞社の飯塚浩彦社長が、フジテレビの持ち株会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)を実質的に率いる日枝久取締役相談役の招きで、FMHの「社長会」に出席した。フジサンケイグループの関係者は「社長会はFMHの最高意思決定機関とされる。正式な取締役会などとは違い、日枝氏の意向がなければ、たとえ希望しても出席できない」と解説する。産経のトップが参加するのは初めてという。
この関係者は「社長会に飯塚社長が出席したことは、日枝氏がFMHとして産経を支援する方針を示し、産経からはFMHに“恭順の意”を示して子会社入りをお願いするという立場を示したと言える」と話す。なお、FMH広報は「社長会は意思決定機関ではない」としている。
そもそも産経とFMHは、よく知られる「フジサンケイグループ」という名称から関係が深いように思われがちだが、実際は「待遇面はもちろん、報道の姿勢も違うし、ほとんど関係はない」(産経若手社員)。
資本的にはFMHが産経株の39.9%を保有しており、産経はFMHの持ち分法適用会社に過ぎない。保有比率が40%を超え、経営に一定以上関与があれば連結子会社と定義される。
「FMHはあえて40%を保有せず、連結子会社にしないようにしているようだ。経営が苦しい産経を子会社化するのは、株主から歓迎されないのが目に見えているからだ」(関係者)
ただ、新聞業界の長期低迷を受け、産経も苦境にあえぐ。急浮上したFMHによる産経の子会社化は、産経にとっては強力な救済策となる。
産経は昨年来、大規模な希望退職を募ったり、支局の大半を閉鎖したりする大リストラを行った。また、報道姿勢の特徴だった嫌韓路線を抑えることや、自社サイトへの独自記事の積極的な出稿を促すことで、ネット広告収入の増加も目指している。