平成時代から令和時代への転換期に、小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」2019年5月号では「天皇と日本の歴史」を大特集。日本の歴史の中でこれまで天皇がどんな役割を果たしてきたのかを調べました。

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■権力者から実権のない神様に

 天皇のルーツは、古墳時代の大和政権の君主だ。ただし、当時は、「天皇」ではなく、「大王」と名乗っていた。中国の「皇帝」より格下の名前だ。しかし、やがて中国に隋や唐という大帝国が生まれると、皇帝と対等な「天皇」を名乗り、隋や唐にならって天皇中心の律令国家を目指した。

 国家の中心となった天皇は、最初は大きな権力を持っていて自ら政治にあたったが、神様のように崇められるうちに、やがて実権を持たない存在となり、天皇の代わりに貴族の藤原氏が実権を握る摂関政治が始まった。藤原氏に代わって、天皇を退いた後の上皇や法皇が実権を握ったのが院政だ。

■天皇の権威が政治に利用された

 その後、政治の実権を握った武士は、天皇の権威を利用し、天皇から太政大臣や征夷大将軍に任命されることで権力を保った。実権を奪おうとする天皇もいたが、いずれも失敗した。この状態は、江戸時代まで長く続いた。

 江戸幕府を倒した人々は、天皇を中心とした強い国をつくろうと考えた。明治時代にできた大日本帝国憲法では、天皇が日本の元首とされ、一般の国民は神様のように崇めたが、立憲君主制の下、天皇の力は憲法で制限されていた。やがて天皇の権威を利用し、軍部が実権を握って日中戦争に突入した。

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AERA編集部
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