第2次世界大戦中、日本本土の工場などで働かされた韓国人の元徴用工が新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟で、韓国大法院(最高裁)は昨年10月30日、1人あたり1億ウォン(約1千万円)の賠償を命じる判決を言い渡した。日本政府は、元徴用工の賠償問題は「1965年の日韓請求権協定で解決済み」という立場で、強く反発した。韓国最高裁は11月29日には三菱重工業にも賠償を命じ、日韓の政府間で摩擦が起きている。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された記事を紹介する。

故人となった元徴用工の遺影を掲げて2018年10月30日、韓国大法院へ向かう原告たち。この日の判決では、新日鉄住金に元徴用工4人への賠償が命じられた (c)朝日新聞社
故人となった元徴用工の遺影を掲げて2018年10月30日、韓国大法院へ向かう原告たち。この日の判決では、新日鉄住金に元徴用工4人への賠償が命じられた (c)朝日新聞社

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 裁判で争点になったのは、日韓が国交を正常化する前提として結んだ日韓請求権協定によって、元徴用工たちが日本企業に損害賠償を求める権利が消滅したかどうかだった。

 協定には、日本が韓国に対して無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力を行い、両国間や国民の間で元徴用工への未払いの賃金などの「請求権」の問題は「完全かつ最終的に解決されたことを確認する」と明記された。日本政府はこれを根拠に、元徴用工らへのすべての補償問題は解決済みだと主張。韓国政府も、日本からの経済協力には元徴用工らへの補償問題を解決する資金が含まれ、補償は韓国政府が取り組む課題としてきた。

 しかし、韓国の最高裁は、元徴用工の労働実態は「日本の不法な植民地支配や、侵略戦争と結びついた反人道的な不法行為」にあたると指摘。元徴用工らの被害に対する「慰謝料」は協定には含まれていないと判断し、賠償を求める権利は消滅していないと結論づけた。日韓政府が外交的に解決済みとしてきた問題を、司法がひっくり返した形だ。

 安倍晋三首相は「国際法に照らして、あり得ない判断だ」と強く反発した。韓国政府は、知恵を集めて対応を検討すると表明したが、判決は韓国民に支持されており、「尊重する」とも述べた。日韓は慰安婦問題の合意に基づいて設立された財団の解散をめぐってもぎくしゃくしており、関係をどう維持するかが問われる。

【キーワード:韓国人の元徴用工】
戦時中、日本統治下の朝鮮半島から日本国内の工場や炭鉱などに労働力として動員された人たち。企業による募集や国民徴用令の適用などを通じて行われたが、当時の公文書や証言から、ときに脅迫や暴力を受けながら、過酷な環境で働かされたことがわかっている。

※月刊ジュニアエラ 2019年2月号より

ジュニアエラ 2019年 02 月号 [雑誌]

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AERA編集部
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