福島県にある東京電力福島第一原子力発電所の事故が起こって7年が過ぎた。炉心溶融(メルトダウン)によって溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の詳しい様子はいまだにわからず、放射性物質に汚染された水も増える一方だ。事故はまだ続いている。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞編集委員・上田俊英さんの解説を紹介しよう。

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「廃炉に向けた準備をしていた7年だった」

 福島第一原発を2月9日に訪れると、東京電力の担当者はこう説明してくれた。

 原発の敷地をまわると、地表は一面、モルタル(セメントと砂を水で練ったもの)で覆われていた。地中から出る放射線をさえぎるためだ。その結果、今は敷地の95%の場所で防護服やマスクをつけず、普通の作業服で仕事ができるようになった。

 3号機の建屋の最上階では、カマボコ形のドームの設置工事が進んでいた。外部に放射性物質が飛び散るのを防ぐ設備で、2月21日に完成した。今年の秋には、この建屋内のプールにある使用済み核燃料の運び出しが始まる予定だ。

注)放射性物質=生物の細胞を傷つけ、病気の原因ともなる「放射線」を出す物質のこと。

■溶け落ちた核燃料の状況は不明

 しかし、こうした作業は、本格的な廃炉作業を始める準備に過ぎない。

 炉心溶融を起こした1~3号機では、燃料デブリの一部が原子炉を突き抜け、原子炉を囲む格納容器の底にたまっている。格納容器の内部をロボットや遠隔操作カメラで調べる調査は2017年1月に始まった。そして、これまでに2、3号機で、燃料デブリが確認できた。

 しかし、調査場所はわずかで、燃料デブリもほんの一部が見えただけだ。いったいどこに、どれだけ、どのようにたまっているのか、まったくわかっていない。

 廃炉とは本来、こうした燃料デブリをすべて取り出し、原子炉や建屋などを解体することだ。国と東京電力の廃炉の計画にも、当初はそう書かれていた。

 ところが、現在の計画に具体的に書かれているのは、燃料デブリの取り出し開始までだ。21年内に1~3号機のどれかで取り出しを始めるとされている。

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上田俊英
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