2021年春、横浜・みなとみらいに新キャンパスを誕生させた神奈川大学。
地域に開かれた“知と文化の交流拠点”を目指す、都市型・未来型キャンパスの新しい形とは?

神奈川大学長インタビュー
「みなとみらいのすべてがキャンパスに」

 高さ約100m、21階建ての高層キャンパスに教室や研究室、人々が交流できる施設を携え、「世界や地域に開かれたキャンパス」として誕生した神奈川大学「みなとみらいキャンパス」。
 2028年の創立100周年に向け、「横浜の総合大学」として再始動する。

1階から7階の学生ラウンジ(学食)まで屋外階段で上がることができる。6・7階には緑豊かなテラスがあり、みなとみらいの景色を楽しみながら自由に座って歓談できる
1階から7階の学生ラウンジ(学食)まで屋外階段で上がることができる。6・7階には緑豊かなテラスがあり、みなとみらいの景色を楽しみながら自由に座って歓談できる

 開国後、世界との接点となった横浜港にほど近く、日本の近代化の歴史を感じることができる「みなとみらい地区」。意外にもこれまでここに総合大学はなかった。みなとみらい初となる総合大学のキャンパス設立にあたり、この地を選んだ理由について兼子良夫学長はこう語る。

「国際都市・横浜において、最も先進的といえるみなとみらい地区は、非常にコンパクトなエリアの中に多くのグローバル企業や官公庁が集まり、美術館や劇場などの文化的な施設もある『国際化の縮図』のようなエリア。このような場所は世界的にもあまり例がなく、これからのグローバル人材を育てる場として最高の立地だと考えました」

■始まりの地に“原点回帰”

 みなとみらいキャンパスに集まる3学部は、特にグローバル教育に重点を置く学部だ。神奈川大学は1928年、横浜に創設された「横浜学院」に始まり、外国語学部英語英文学科、スペイン語学科を先駆けて設置するなど、国際社会の変化に対応し世界に通用する人材の育成に早くから取り組んできた。

「グローバル人材養成は神奈川大学のDNAとも言うべきもの。みなとみらいは本学の始まりの地・桜木町にも近く、まさに原点回帰。より現代的なスタイルとして誕生したのが新キャンパスです」

 兼子学長はまた、「みなとみらいエリアすべてが大きなキャンパスであり、学びの場」と強調する。

「国際企業が立ち並ぶエリアを肌で感じ、多くの刺激を受け、自分もいつかこういう仕事がしたいと、もっと学びたくなるのではないでしょうか」

 持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる共生社会の実現に向け、近年は学生や教員がキャンパスから飛び出し、地域や社会、世界で起こっている様々な事象を題材に研究や学修を進める傾向にある。

「大学の存在意義は、いかに時代を先導する力を示すか、いかに人類の未来に貢献できるかにかかっています。みなとみらいで、本学の教育プログラムと立地の相乗効果が様々な形で化学反応を起こしていくことを期待しています」

■オープンな対話と連携

 新キャンパスには、自治体、企業等団体、地域住民などあらゆるステークホルダーの総合窓口として「社会連携センター」も設置された。社会課題を中心とした情報を収集、総合大学としての利点を生かし、学内外のリソースを活用した、オープンイノベーション推進の拠点として課題解決に取り組む。兼子学長は「神奈川大学がハブとなり、未来社会の教育・研究などに貢献できれば」と話す。

 キャンパスには全学部の教員の交流を促進する研究空間も作られ、教員間の学術交流も一層進む見込みだ。このほかにも、高層階の3フロアの吹き抜け空間にあるプレゼンフィールドや各階にしつらえたラーニングコモンズ、ガラス張りの教室など、人と人との交流を生み出すような工夫を随所に採り入れた。さらに、低層階はグローバルラウンジ、観光ラウンジなどあらゆる人々が自由に利用できる「ソーシャルコモンズ」も充実している。

「設計者が想像もしていなかった使い方をしてもらって、学部間や地域、企業ともオープンな形で対話しながら連携し、新たな研究や教育を生み出していってほしい」と期待を寄せる。

 2028年の創立100周年を前に、22年4月には建築学部を開設する(設置届出中)。23年には理学部の横浜キャンパス移転で横浜地区へ全学部が集結し、名実ともに「横浜の総合大学」として再始動する。建学の精神の一つでもある「積極進取」を体現した、熱意あるハイレベルな研究者とともにしっかりと学びを深められる環境が整う。

「『成長支援第一主義』をコンセプトに、学生の皆さんが成長を実感でき、自信をもって社会に船出できるよう、教職員全員が一丸となり支援するのが本学の強み。ぜひ、神奈川大学で学んでください」

兼子良夫 神奈川大学長

同志社大学商学部卒業。大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。大阪大学博士(経済学)。2003年(平成15年)より神奈川大学経済学部に勤務。経済学部長兼第二経済学部長、学校法人神奈川大学理事を経て、2016年(平成28年)神奈川大学長に就任。2020年(令和2年)9月に学校法人神奈川大学理事長に就任し、大学長との兼任となる。専門は公共経済学、財政学。


「人」が集い、「知」が交流する
開かれたキャンパス

 学生をはじめ、市民や観光客、社会人などが自由に集い、交流できる、みなとみらいキャンパスを象徴する施設が1~3階の「ソーシャルコモンズ」だ。吹き抜け空間の「ナレッジコア」を中心に、大学という枠を超えてあらゆる人が集い交わる「知の拠点」となる。

【ナレッジコア(左)】1階の吹き抜け空間。市民や子どもたちも楽しめるような絵本、観光ガイド、クールジャパンやSDGsに関する本、神奈川県や横浜市に関する資料など、1階だけで5000冊もの書籍が配架されている。 【カフェ(右)】ナレッジコアに隣接するカフェではミートアップイベントなども構想されており、学生と企業をつなぐコミュニティーハブとしての機能も果たす
【ナレッジコア(左)】1階の吹き抜け空間。市民や子どもたちも楽しめるような絵本、観光ガイド、クールジャパンやSDGsに関する本、神奈川県や横浜市に関する資料など、1階だけで5000冊もの書籍が配架されている。 【カフェ(右)】ナレッジコアに隣接するカフェではミートアップイベントなども構想されており、学生と企業をつなぐコミュニティーハブとしての機能も果たす

 1~3階の「ソーシャルコモンズ」は、学生や地域にも開かれた自由な交流の場だ。2~3階は図書館、1階の「ナレッジコア」には各所に本が置かれ、一般市民も自由に読むことができる。隣接するカフェではミートアップイベントなども予定され、学生と企業をつなぐコミュニティーハブの機能も。世界の食文化を楽しめるレストランも今夏にオープン予定だ。

【ラーニングコモンズ(左)】キャンパス内の各階にあるラーニングコモンズ。自習やグループ学習の場として使用できるほか、先輩による履修指導が行われるなど、交流の場としても活用される。 【図書館(右)】2~3階の図書館には、3学部のカリキュラムに即した内容の資料が揃う。ソーシャルコモンズや各階のラーニングコモンズにも並ぶ資料も含めると全20万冊
【ラーニングコモンズ(左)】キャンパス内の各階にあるラーニングコモンズ。自習やグループ学習の場として使用できるほか、先輩による履修指導が行われるなど、交流の場としても活用される。 【図書館(右)】2~3階の図書館には、3学部のカリキュラムに即した内容の資料が揃う。ソーシャルコモンズや各階のラーニングコモンズにも並ぶ資料も含めると全20万冊

「グローバルラウンジ」では、ゲームやアクティビティを通じてネイティブの外国語に触れながら、多言語の異文化交流が可能だ。また、みなとみらい地区を訪れる人々向けに観光情報の発信や旅行に関する相談なども行う「観光ラウンジ」は、観光について学ぶ学生が、学びを実践的に生かす場でもある。インターンシップやゼミ活動での実地体験を積む場としての活用も期待されている。

【ラボ(左)】小・中学生、高校生向けの実験教室や古文書修復などの体験教室を開催予定。湘南ひらつかキャンパスで好評だった「ファブラボ」もこちらへ移動し、3Dプリンタ等を利用したモノづくり体験もできる。一般利用も可能だ。 【米田吉盛記念ホール(右)】創立者の名を冠した記念ホール。400人収容可能で授業や講演会などで使用される。交差点と広場に面したガラス張りで、新キャンパスを象徴するオープンな施設だ。座席はブルーの生地で「海」を感じさせる内装となっている
【ラボ(左)】小・中学生、高校生向けの実験教室や古文書修復などの体験教室を開催予定。湘南ひらつかキャンパスで好評だった「ファブラボ」もこちらへ移動し、3Dプリンタ等を利用したモノづくり体験もできる。一般利用も可能だ。 【米田吉盛記念ホール(右)】創立者の名を冠した記念ホール。400人収容可能で授業や講演会などで使用される。交差点と広場に面したガラス張りで、新キャンパスを象徴するオープンな施設だ。座席はブルーの生地で「海」を感じさせる内装となっている

「社会連携センター」も設置され、周辺企業や組織、地元自治体、地域住民などとの連携の場となる。学生も参加型・体験型学習に加わることで、卒業後に社会で活躍するための経験を積むことができる。

■迎え入れるみなとみらいの方に話を聞きました!
「街の新たなプレイヤーとして活性化に期待」

一般社団法人横浜みなとみらい21 理事長 坂和伸賢氏
一般社団法人横浜みなとみらい21 理事長 坂和伸賢氏

 みなとみらい地区初の総合大学として誕生した神奈川大学の新キャンパスは、多様な企業や施設が集積する横浜の都心部に立地します。近年はR&D(研究開発拠点)、大規模音楽施設も集まるなど、みなとみらいは常に進化し、「感動と新たな価値を創り出す街」です。

 SDGsを見据え、「地域に開かれたキャンパス」という施設面とマインドを持った同大の新キャンパスは、この地で働き、住み、訪れる人々にも大きな刺激となります。学生や教員の皆さんが新たなプレイヤーとして活躍することで街を活性化させ、より価値を高めて頂けると確信しています。

 現在、横浜では神奈川大学をはじめ複数の総合大学が産官学連携を強化し、人材交流、大学発ベンチャー発掘、起業家支援をしようという動きもあります。グローバル企業でのインターンシップや、街で働く方々と連携したエクステンション講座なども期待されます。豊富な学びの選択肢があるこの街で学び、可能性の追求や新たな創造体験をして頂けると思っています。

みなとみらいをステージに
グローバルな学び場

 新キャンパスは、グローバル教育に重点を置いた経営学部、外国語学部、国際日本学部の3学部の学び舎だ。学びと研究のフィールドを共にすることで相互に交流し、新しく、深い学びが展開されることが期待されている。

【プレゼンフィールド(左)】教員と学生のつながりを深められるよう教員研究室とゼミ室を併設した高層階。3フロアを1ユニットとする吹き抜け空間にはプロジェクターなどを設置し、プレゼンフィールドに。 【ガラス張りの教室(右)】また、4面ガラス張りの小教室も設置するなど、すべての学びを「見える化」。キャンパス内のアクティブな交流もあえてオープンだ
【プレゼンフィールド(左)】教員と学生のつながりを深められるよう教員研究室とゼミ室を併設した高層階。3フロアを1ユニットとする吹き抜け空間にはプロジェクターなどを設置し、プレゼンフィールドに。 【ガラス張りの教室(右)】また、4面ガラス張りの小教室も設置するなど、すべての学びを「見える化」。キャンパス内のアクティブな交流もあえてオープンだ

 経営学部、外国語学部、国際日本学部のグローバル系3学部が集まった新キャンパス。2020年に新設された国際日本学部は、ダイバーシティやSDGsなどに表わされる共生社会の実現に向け、世界や「世界における日本」への深い知識と洞察力を持ち、国や宗教、多様な価値観の違いを理解できるグローバル人材の養成が不可欠として構想がスタートした。

■日本を理解して世界へ

 開港後、国際都市として発展してきた横浜はフィールドワークの舞台としては最適だ。近隣の博物館や美術館、劇場などの文化施設、外国人居留地などをはじめ、街中で文化や歴史を体験しながら学ぶプログラムに各学部が取り組む。

 以前より神奈川大学ではヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル提供の寄付講座が外国語学部で開催されるなど、学外との関わりに積極的に取り組んできた。みなとみらいキャンパスにおいても新たな試みとして日本航空との共同事業を発表。国際経験豊富な日本航空社員が観光文化の授業をサポートしたり、ソーシャルコモンズを中心に展開される社会連携事業に参加する。

 グローバル企業が集結し、観光スポットとしても世界中から人々が集まるみなとみらい。この街全体をキャンパスと捉え、今後も企業や行政・国際機関などと様々な取り組みをしていくという同大。深い学びと新たな価値を創造できる場になることが期待されている。

【アリーナ(左上)】防振・防音対策済みのアリーナは体育授業や運動部の練習で使用。ダンススタジオやトレーニングジムも併設されている。 【トップラウンジ(右上)】西に富士山、東に東京タワーと東京スカイツリーを望める最上階の学食。講演会やレセプション会場としても利用される。 【アクティブキッチン(下)】IHクッキングヒーター、電子レンジなどを完備。留学生やゼミ仲間など国内外の学生同士で、食を通じた文化交流が可能
【アリーナ(左上)】防振・防音対策済みのアリーナは体育授業や運動部の練習で使用。ダンススタジオやトレーニングジムも併設されている。 【トップラウンジ(右上)】西に富士山、東に東京タワーと東京スカイツリーを望める最上階の学食。講演会やレセプション会場としても利用される。 【アクティブキッチン(下)】IHクッキングヒーター、電子レンジなどを完備。留学生やゼミ仲間など国内外の学生同士で、食を通じた文化交流が可能

■みなとみらいに集まる3学部

【経営学部】

国際経営に必要な知識を分野横断的に学ぶ「国際経営学科」を設置。幅広い知識や教養が求められる「国際経営」の現実を見据え、グローバル時代を生き抜くための経営理論と実践的なスキルを身につけ、国際経営の全体像を学べる。経営学の知識やマネジメントの技能、高度な語学力や情報処理能力を修得し、国際社会のさまざまな分野で中心的な役割を果たすリーダーを目指す。


【外国語学部】

英語英文学科、スペイン語学科、中国語学科で構成。外国語を軸に各言語圏に息づく考え方や文化、歴史、社会を多角的に学ぶ。またネイティブ講師と自由に会話する各言語のLanguage Expressや、海外ボランティアなど、体験的な学びも重視。「外国語+αの国際人としての実践力」を身につけるとともに、人間の多様なあり方、価値観を相互に認め合い、協働することができる力を養うことに取り組む。


【国際日本学部】

2020年4月開設。世界の文化的多様性や日本文化を深く理解し世界に伝える「国際文化交流学科」、日本語の運用能力を高め、日本文化をグローバルな感覚でとらえ直す「日本文化学科」、街おこしや地方振興のキーパーソンを育成し、歴史・民俗・文化創生をグローバルに学ぶ「歴史民俗学科」の3学科を擁する。世界と日本における洞察力をもち、文化間の相互理解、多文化共生を図ることができるグローバル人材の育成を目指す。

みなとみらいキャンパス所在地
〒220-8739 神奈川県横浜市西区みなとみらい4-5-3

神奈川大学公式サイト

提供:神奈川大学