中学受験塾を舞台にしたテレビドラマ「二月の勝者―絶対合格の教室―」が、柳楽優弥さん主演で16日から日本テレビ系で放送される。原作は「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中の同名漫画で、2017年の連載開始以来、累計発行部数140万部以上の人気作だ。リアルな中学受験の世界はどのように描かれているのか。AERAムック『偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2022』(朝日新聞出版)では、作者の高瀬志帆さんに、中学受験をテーマに選んだきっかけや、作品に込めた思いを聞いた。

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 高瀬志帆さんが中学受験に興味を持ったのは7年前、「日経DUAL」(日経BP)で「ドタバタ中学受験★物語」(原作:小林延江)の連載を依頼されたことがきっかけだった。自身は地方の公立校出身。中学受験は「頭のいい子と家柄のいい子がするもの」と思っていた。

 だが、連載に先立って中学受験を経験した保護者や塾講師への取材を行ううちに、「それは私の勘違いだったことに気づきました」。中学受験の目的は多様化し、誰もが進学校をめざすわけではないこと、経済的に恵まれない家庭の子どももいること、入試では毎年のように奇跡のような逆転劇が起こること――。

「自分の知らないところでこんなことが起きていたのかと、衝撃を受けました。特に印象に残ったのが、ある保護者の方が言った『中学受験は、親子が二人三脚で取り組む最後の行事』という言葉。なんてエモいんだろう、って」

 当時、中学受験を主題にした漫画、特に塾からの視点を取り上げた作品はほぼ例がなかったことも、創作意欲につながった。「このテーマをここで終わらせてはもったいない」。「日経DUAL」での連載終了後、「週刊ビッグコミックスピリッツ」の編集部に、「進学塾というビジネスに焦点を当てたお仕事漫画」として高瀬さん自ら提案したのが『二月の勝者』だった。


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 同作品の魅力は、足掛け3年以上にも及ぶ取材を元に描かれた数々のエピソードだ。高瀬さんは「実際の話を、漫画向けにかなりふくらませている」と言うが、模試やクラス分けテストに一喜一憂する親の心情、授業料をめぐる夫婦のバトル、塾の思惑と親の期待、エゴがぶつかり合う志望校面談など、そのリアリティーは圧倒的。寄せられる感想は、「そうそう、中学受験ってこう!」という“納得派”と、「小学生にここまでやらせる?」という“ドン引き派”に分かれるという。

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木下昌子
木下昌子

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