■今だからできる新しい試み

 オンラインのつながりを活用し、新しい取り組みに挑戦した学校もあった。新渡戸文化小学校(東京都)では、時間のあるときだからこそ学びの目的を探してほしいと「世界一受けたいオンライン特別授業」を開講。

「自分で人生を切り開いたさまざまな方をゲストに呼び、子どもたちと対話する機会を持ちました。ステイホーム期間ということもあり、普段、忙しい方にも時間をいただけました。パティシエ、パイロット、指揮者……子どもたちが憧れる職業に就き、活躍するプロの方々と直接話せる貴重な体験は、子どもたちの気持ちをワクワクさせてあげられたかな、と思っています」(有馬真帆子副校長)

 また、同校は午後の時間帯を「自分で選ぶ学びの時間」に設定。前述の特別授業のほか、Zoomでつながりながら各自の学習を進める「オンライン自習室」も実施した。各自の学習を黙々と進めたり、時には先生に質問したり……オンライン上での新しい学びのスタイルを実現した。

■これからの新しい学習形態

各校でさまざまな取り組みがされたが、さらにICTの導入は進むだろう。ICT教育に詳しい松田孝さん(小金井市立前原小学校前校長)も、「主体的に生きる素質を育てるためにICTを活用してほしい」と話す。

「これまでは一律一斉の対面授業で、先生が『やるぞ』と言って教えるのが一般的でした。これからの世の中を主体的に生きる人間を育てるためにも、『子どもは教えないと学べない』という学習観から離脱し、自ら学ぶという新しい学びの在り方へと移行するときなのだと思います」

 今後、オンライン授業はどうなっていくのか。松田さんは「非同期型」と「教員の役割」がポイントになるだろうと展望する。

「これまでの対面授業をオンラインで再生産するだけではあまり意味がないと思っています。配信動画で各自のペースで知識を獲得していくというやり方が主流になることも考えられます。教師の役割はもはやteacherだけでなく、個別に関わるcoachであり、モチベーションをあげるmentorであり、グループを統括するfacilitatorでもある。最終的には全体的な学びを組織化するorganizerになるでしょう。また、分散登校のような形が続くならば30人学級ではなくクラス自体を少人数化することも考えられる。学校のシステムが大きく変わる可能性があるのではと思っています」

 私立小学校の挑戦は今後の学びをどう変えるのか。オンライン化は学校の在り方そのものに問いを投げかけている。

(文/アエラムック編集部・岡田慶子)

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岡田慶子
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