「こういった教育の成果はすぐに表れるものではありませんが、実は社会に出てから役立つことが多いのです」

 一方、共学校にも伝統校はあるが、新進校や改革実施校が数多く見られる。それだけに教育改革を進めやすい。

「別学に多い伝統校は『わが校はこういう学校だ』という信念があるため、改革を進めにくい。逆に新進校には、新しいことにチャレンジしやすい環境があります。新しい教育への取り組みは、新進の共学校の方が一歩進んでいるように感じます」(安田さん)

 男女生徒が在籍するためクラブ活動の種類が豊富など、バラエティーに富んでいるのも共学校の良さだ。これからのグローバル社会では、外国人を受け入れるコミュニケーション能力も必要となってくるが、異性との交流のファーストステップと捉えることもできそうだ。では、具体的に学校の例を見てみよう。

■異性の目を気にせず好きなことに没頭

 男子校の巣鴨(豊島区)は、学校方針に「硬教育」を掲げる。それが形となって表れているのがハードな学校行事だ。「大菩薩峠越え強歩大会」は、1965(昭和40)年から行われている伝統行事。真夜中に東京の奥多摩を出発し、早朝にかけて山梨の大菩薩峠を踏破する。歩く距離は学年によって20~35キロと異なるが、約8時間険しい山道を仲間と共に歩き続ける。

 他にも、夏は下帯(ふんどし)をしめての水泳学校、冬には剣道、柔道、駆足いずれかの種目を6日間行う早朝寒稽古がある。入試広報部長の大山聡先生は言う。

「やりきったあとは、みないい顔をしています。体力の限界に挑むような行事は、共学だと難しいかもしれません」

 さらに、異性がいないことで取り繕う必要がなく、いい意味で“バカ”ができる環境でもあるという。授業でも、男子校ならではの先生と生徒の“呼吸”があるようだ。

「今の時代、男女でやるべき教育が違うわけではありません。ただ、男子生徒と教員には、男同士のあうんの呼吸がある。叱るときも男子だとストレートにダメで通じますが、女子生徒には理屈で説明する必要があるかもしれません」

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