韓国新大統領に就任した文在寅(ムン・ジェイン)氏。果たしてどんな人なのだろうか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞国際報道部・鈴木拓也さんの解説を紹介しよう。

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 韓国で5月9日に投開票された大統領選挙で、野党「共に民主党」の文在寅・前代表が勝利し、新大統領に就任した。朴槿恵・前政権に不満だった多くの国民の期待を受け、深刻な若者の就職難や北朝鮮問題、日本との関係改善にどう取り組むかが注目される。

 文氏は1953年、韓国南東部の慶尚南道巨済で生まれた。高校時代はたばこを吸い、酒も飲む「問題児」だったという。72年にソウルにある私立の慶熙大学に進学した。

 大学時代には政府に対するデモを主導し、逮捕された経験もある。司法試験に合格し、弁護士になると、のちに大統領となる盧武鉉氏と出会う。一緒に弁護士事務所を開き、人権派弁護士として活動した。

 2003年に盧氏が大統領に就任すると、政権入りして大統領秘書室長などを務め、側近として支えた。自己分析で「過度な真剣さと潔癖主義」を短所に挙げる。激務から歯が10本抜けたというエピソードも残る。

 大統領選挙で韓国の有権者の関心が最も高かったのは、核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮問題ではなく、雇用問題だった。文氏は、公務員など81万人の雇用を創り出すと約束。ただ、そのためには5年間で約21兆ウォン(約2兆1千億円)が必要とされ、疑問の声もある。

 北朝鮮への対応は、国際社会の大きな関心事だ。文氏は、経済協力を含めて対話に動くとの見方もある。ただ、就任後、真っ先にアメリカのトランプ大統領と電話で話し、協力を確認した。軍事行動も選択肢とする同盟国の出方を見ながら行動するとみられる。

 日本とはぎくしゃくした関係が続く。戦時中に日本の軍人の性の相手をした「慰安婦」の問題が大きい。日韓両政府は15年12月に、日本政府が出したお金で元慰安婦らを支援するなどの内容で合意したが、文氏は不十分と批判。日本側は、ソウルの日本大使館前や釜山の日本総領事館前に設置された「少女像」の撤去を求めるが、文政権に応じる気配はない。(解説/朝日新聞国際報道部・鈴木拓也)

※月刊ジュニアエラ 2017年7月号より

ジュニアエラ 2017年 07 月号 [雑誌]

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鈴木拓也
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