習近平・中国国家主席 (c)朝日新聞社
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二階俊博・自民党幹事長 (c)朝日新聞社
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 新型コロナウイルスを収束させる「最後の切り札」がワクチン。他国からの輸入に血眼になる日本を横目に、世界中にワクチンを配り続けている国がある。隣国の中国だ。「ワクチン外交」の先に覇権強化を狙う中国の攻勢に、私たちはどう向き合っていけばいいのだろうか。

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 その“贈り物”には、中国とタイの友情を示す証しとして、両国の国旗が描かれていた。

 2月24日、タイの首都バンコク近郊のスワンナプーム空港に、中国から空輸されたコンテナが到着した。中身は、中国のシノバック社製のワクチン20万回分だ。

 タイは、インドネシアなどの周辺国に比べてワクチンの確保が遅れており、国内で批判が高まっていた。それを知っていたからだろう。中国外務省の汪文斌副報道局長は、「中国はワクチンを最も早く、世界の公共財とすることを約束した国です」と誇らしげに語った。

 シノバックのワクチンについては、ブラジルやインドネシアなど、複数の国で有効性を確認する試験が実施されている。ただ、トルコでは91.25%の有効性だったのに対し、インドネシアでは65%。中国のワクチンは米国や英国のものに比べて安全性や治験に関するデータの開示が少なく、疑念の声も出ている。

 それでも中国製ワクチンが求められているのは、世界中でワクチン争奪戦が起きているからだ。中国の情勢に詳しい神田外語大学の興梠(こうろぎ)一郎教授は言う。

「コロナが世界中に広がったのは、中国がWHO(世界保健機関)に情報を提供しなかったからだという批判が世界に広まっています。一方、先進国は自国向けのワクチン確保で大変な状態。中国は、その隙を狙って発展途上国に積極的にワクチンを提供し、各国との関係を強化しようとしているのです」

 外務省の資料によると、世界で臨床試験段階にある63種類のワクチンのうち16種類が中国企業のもの。2月8日時点で、中国はアフリカや東南アジアなど世界53の国・地域にワクチンを提供することが決まっている。

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