「生物」と「機械」を融合させる研究が進んでいます。今回は、「ガの触角」を部品として使い、空中を飛びながら匂いの発生源を探し出す「ドローンロボット」をご紹介します。この開発には、“意外な目的”があるといいます。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ2025年6月号」(朝日新聞出版)からお届けします。※外部配信先で画像がご覧いただけない場合は、AERA with Kids+をご覧ください
【写真】ガの触角を使った「ドローンロボット」のしくみはこちら(全4枚)世界新記録! 5m離れた匂いの発生源の探索に成功
昆虫は匂いを感じ取る「嗅覚」がとても優れている。例えば、オスのガはメスが出すフェロモンという化学物質のかすかな匂いを、数百m~数㎞離れたところでキャッチし、メスのいるところまで飛んでいく。匂いを感じ取るのは、頭部にある触角だ。長さが1㎝にも満たない小さな触角が、匂いを感じ取る素晴らしい性能を持っている。
ガの触角をセンサーとして使えば、人が感じ取れないような匂いもキャッチし、その発生源を探し出すロボットを作れるのではないか? こう考えて研究を進めてきた信州大学繊維学部の照月(てるつき)大悟准教授らの研究チームは、今年2月に画期的な匂い探索性能を持つ「ドローンロボット」を発表した。




「ドローンロボット」は、直径10㎝程度の小型ドローン部分の前方に空気を誘い込むカバーが突き出し、その中にはカイコガ(絹糸をとる繭を作るガ)のオスの触覚を取り付けたEAGセンサーという電子部品が収まっている。ガの触角がフェロモンをキャッチすると電気信号を発するので、その信号をEAGセンサーが受け取り、匂いの探知に利用するというしくみだ。
このドローンロボットが匂いを探る様子を真上から撮影した(※下記画像)。左のファンの前には、カイコガのメスが出すフェロモン(匂い源)を染み込ませたろ紙があり、風とともに匂いが右方向に流れてくる。実験では、スタート地点にあったドローンロボットは離陸後、匂いをキャッチしながら回転して向きを変え、空中に静止。その後前進、回転して方向転換……を繰り返して匂いの発生源を探し出し、終了地点に着陸した。匂い源までの距離は5mで、同種のロボットでは世界新記録だという。

