日本はストレス大国といわれ、特に働き盛りの「現役世代」にとってストレスは付いてまわるもの。職種によっては強いストレスと向き合う人たちもいる。江崎グリコが全国の20代から60代の働く男女500人に、ストレスとの向き合い方について調査(※1)した結果、見えてきたものとは。ストレスに未然に備える有効な方法はあるのだろうか?

ストレスとうまく付き合えていると自覚する人は半数しかいない

 人がストレスを感じる大きな要因として、人間関係が挙げられることが多い。働く人の悩みを数多く取り上げてきた雑誌『AERA』でも、人間関係にまつわるストレスについてはしばしば登場する。ストレスにまつわる過去数年の主な見出しをまずは見てみよう。

『私のことはスルーして 仲間内SNSで“リアクション待ち”されるストレス(2023年4月17日)』、『管理職は“つらいよ” 「なりたくない6割」時代(2023年3月27日)』、『「理不尽」には負けない カスタマーハラスメントの「現状」と分析(2022年8月29日)』、『募るイライラ、距離と理解を 子育て・孫育て、両親と祖父母の関係(2022年8月29日)』、『憩いの時間を奪わないで! 「会話クラッシャー」にご用心(2022年7月25日)』。

 内容を見てみると、対人関係、中でも特に仕事におけるプレッシャーが強く、日々ストレスを抱え、悩む現代人の姿が浮かび上がってきた。

 実際、江崎グリコ株式会社が2022年に行った「ストレスとの向き合い方実態調査」で、20代から60代の働く男女500人を対象としたストレスとの向き合い方に関する調査の結果、4人に3人が「ストレスを感じる」と答えており、ストレス要因TOP3は「仕事」、次いで「お金」「感染リスク」だった。半数以上がストレスの要因として「仕事」をあげているが、ストレスを感じるエピソードを聞くと、仕事での理不尽な要求がストレスの要因となることが多く、業種や職種ならではの苦労も垣間見えてくる(図参照)。

 ストレスを感じている人に、実際にストレスとうまく付き合えているかと訊くと、「付き合えている」と答えたのは56.6%にとどまった。ストレスを未然に防ぎたいかと訊くと、85.2%が「未然に防ぎたい」と答えたものの、ストレスを未然に防ぐ行動が「できている」のはおよそ3人に1人という結果になった。未然に防ぐ行動ができている人のストレス対策は「睡眠」「運動・筋トレ・ストレッチ」「旅行やドライブ」の順となった。

 またこの調査で「仕事を進める上で、ある程度のストレスや緊張感は必要だと思う」と約7割が答えており、適度なストレスは必要だが、過度なストレスをためないように、ストレスとうまく付き合うことが求められているといえる。

 ストレスとうまく付き合っていくために注目してほしいのがGABA成分だ。カカオや野菜(トマトやケール、パプリカなど)、果物(メロンやブドウ、バナナなど)、乳酸菌発酵製品(漬物やヨーグルトなど)などに含まれている成分で、「名前だけは知っている」という人も多いだろう。江崎グリコで長年研究している松川広輝さんに話を聞いた。

教えて!江崎グリコの研究員さん!

「GABA成分とは、γ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid)の略称で、アミノ酸の一種です。主な働きは、興奮状態を抑えて精神を安定させるといった神経の抑制です。成分自体は昔からあるもので、自然界に広く存在しています。例えばカカオやトマトをはじめとした野菜や漬物などにも含まれているんですよ」

 名前からは人工的なイメージもあるGABA成分だが、天然に存在する成分なのだ。

「GABA成分は血液脳関門を通らないことは分かっていますが、小腸から吸収されて血流に乗り、自律神経の末端に作用し、自律神経のバランスを整えるよう働きかけると考えられています。ご存じの方もいるかもしれませんが、人間の体は交感神経が優位になると身体の活動が活発になったりします。反対に、副交感神経が優位になると、心身がリラックス状態に。それがストレス低減につながるといわれる理由です」

江崎グリコ株式会社 研究員の松川広輝さん

 また、GABA成分の摂取がストレス低減につながる理由には、ストレスと睡眠の関係もあるという。

「そもそも、人の体は夕方から徐々に副交感神経が優位になっていき、リラックスした状態で眠りにつきます。しかし、残業で遅くまで仕事をしていたりすると、なかなか自律神経のスイッチが切り替わらず、夜更かしをしてしまいます」

 その結果、翌朝はシャキッと目覚めにくく、頭も体もスッキリしない状態で出社することになる。すると、仕事が思うようにはかどらない、イージーミスが増えるなどが起き、ストレスへとつながるのだという。

「江崎グリコに限らず、これまでに様々な企業や機関で行われてきた研究からも、副交感神経が優位になってリラックス状態になると、質の高い睡眠がとれることが分かっています。当社で行った『睡眠の質とGABA成分』の関係を調べた研究からも、GABA成分を摂取することで、副交感神経の働きを高めることが分かっています。ほかにも、GABA成分は認知記憶力、ワーキングメモリにもプラスの影響を与えるといわれていますし、正常な範囲内での血圧低下にも期待されています」

「交感神経が優位だと体が興奮状態になりやすく、イライラなどから仕事や勉強に集中しにくくなる傾向があります。また、興奮状態では血圧も上がりやすい。反対に、副交感神経が優位になって心身がリラックスすると、集中力が高まって仕事や勉強がはかどり、血圧も落ち着きます」

研究結果から分かったGABA成分の効果

 睡眠とGABA成分との関係以外の実証実験の事例もある。

「人が吊り橋を渡るときに、GABA成分を摂取していたらストレス値は変わるのかを測定する調査では(※2)、20代から50代の男女12人に、GABA成分を摂るチームと摂らないチームとに分かれて、奈良県十津川村にある“谷瀬の吊り橋”(長さ297m、高さ54m)を渡ってもらう実験です」

 実験方法は、吊り橋の出発前・中間地点・到着後の3つのタイミングで唾液を採取し、唾液中のクロモグラニンA(ストレスマーカー)の量を計測して、ストレス度合いを調べるというもの。

 GABA成分を摂らなかったチームは、もっとも橋が揺れる中間地点で強いストレスを感じ、GABA成分を摂ったチームは、落ち着いた状態で橋を渡り切った。この調査から「GABA成分を摂取すると、ストレスから来る神経の高ぶりを抑えられることが分かります」と話す。

「個人差はありますが、GABA成分は摂取後30~120分で神経のバランスに働きかけるといわれてます。大事な仕事の前などには28mg、夜ぐっすり眠りたい時は100 mg摂取することが推奨されています」

「現在でも様々な角度からGABA成分は研究されています。次はどんな研究結果が出てくるのかと、毎回楽しみにしています」 (松川さん)

 充実した毎日を送るには、GABA成分をうまく摂ることを習慣にしたいと松川さん。

「GABA成分は、非常にポテンシャルの高い成分です。江崎グリコの研究所では、ストレスを未然に防ぐ一助になるとも考えています。今後もGABA成分の研究開発を進め、忙しい現代人をサポートし続けていきたいですね」

 まさにGABA成分は、ストレスを低減したい現代のビジネスパーソンの味方。仕事や勉強で高いパフォーマンスを発揮したい人はもちろん、毎日スッキリとした気分で過ごしたい人は、ぜひGABA成分に注目してみよう。

松川広輝さん

江崎グリコ株式会社 栄養菓子・補食事業部 商品開発部

「GABA成分は現代人を支える優秀な成分なので、ぜひ日常に取り入れていただいて、充実した毎日を送っていただきたいですね」

※1「ストレスとの向き合い方実態調査」 調査概要
●調査時期:2022年8月8日(月)〜8月9日(火)
●調査手法:インターネット調査
●調査対象:全国の 20 代〜60 代の働く男女 500 人
●実査委託先:楽天インサイト

※2 GABAストレス研究センターによる「吊り橋を渡るときのストレスを、現代社会において避けることのできないストレスに見立て、GABAのストレス緩和効果について検証」を行った実験結果より
●調査時期:2016年
●調査手法:奈良県吉野郡十津川村・谷瀬の吊り橋(長さ297m、高さ54m)で実施
●調査対象:20代から50代の男女12人