「NFT」はJリーグをはじめ、スポーツ界でも活用されている ©S.D.CO.,LTD.

「NFT」という言葉を耳にする機会が増えた。「非代替性トークン」と訳され、デジタルデータでありながら偽造できない代替不可能なデータを指す。一気に生活圏に入ってきた理由とは。

 2022年、政府の「骨太方針2022」にNFTやブロックチェーンを活用したWeb3.0の推進が記載され、岸田文雄首相の所信表明演説でも言及された。NFTとは、そのデータがオリジナルであることを示すブロックチェーン技術を使った「代替不可能なトークン」。偽造防止の観点から、コンサートのチケットやファンクラブの会員証などにも使われており、2023年にはふるさと納税にも採用されるなど、より身近になっている。

政府もNFTを活用したサービスの利用拡大を推進

 NFTには、そのデータがオリジナルであることを示すブロックチェーン技術が使われている。ブロックチェーンに関するコンサルティングや講演を行う一般社団法人ブロックチェーン推進協会のエバンジェリスト、奥達男氏はNFTの広がりについてこう語る。

「ブロックチェーン、およびNFTを使っていない業界はないと言えるぐらい、さまざまな業種業態で活用されはじめています。今年に入り、大手鉄道会社や航空系グループがNFTマーケットプレイスをスタートさせ、NFT商品の販売に着手しました。まだ発表していない企業も多数あるので、広がりは想像以上に大きいと思います」(奥氏)

 たとえば、食品や流通業界で行われているトレーサビリティーシステム。これにブロックチェーンを活用することで、製造工程や流通過程を追跡するだけでなく、たとえばSDGsに配慮した製造、流通を経ている製品かを証明したり、その価値をNFT化して製品に付加したりすることも可能になる。また、売買の手続きが煩雑な債券や不動産などは、NFT化することで手続きを簡略化し、取引が増えることが期待されているという。

 実証実験の領域も多く、まだ大きな利益につながっているとは言い難い。また、かつてブロックチェーンといえば暗号資産(仮想通貨)ばかりが想起され、投資を持ちかけるなど悪いイメージもあった。しかし、日本での成長の可能性は大きいという。

「日本は2017年に暗号資産交換業者を金融庁・財務局の登録制にし、その後も世界に先駆けて暗号資産に関する法整備が整えられたこともあり、比較的健全なマーケットを作ることができました。業界関係者にとって日本を含めたアジアは、魅力的な市場だと見られているのです」(同氏)

最新技術を活用したサガン鳥栖のファントークン

イベントでファンやサポーターたちと交流するサガン鳥栖の岩崎悠人選手 ©S.D.CO.,LTD.

 一足先に、事業に活用しはじめたのがスポーツ界だ。佐賀県鳥栖市をホームタウンとするJリーグチーム「サガン鳥栖」は、地元の人やファンを巻き込んだ“コミュニティー構築のためのデジタル会員証”を意味するNFT、ファントークンを発行している。スタジアムに来場したり、グッズを購入したり、地元のお店を利用すると、トークンのステータスが上がっていく仕組み。サガン鳥栖を運営するサガン・ドリームス代表取締役、小柳智之氏はファントークンに大きな期待を寄せる。

「2021年シーズンで引退し、サガン・リレーションズ・オフィサーに就任した高橋義希氏からも『ファントークンに積極的に関わりたい』との依頼をもらっています。サポーターだけでなくスポンサーや地元企業も含めて、皆さんの期待値は高いと感じています」(小柳氏)

 ファンクラブとの違いはなんだろうか。これまでのファンクラブでは、スタジアムやイベントにご招待するなど、基本は会場に来るファン向けのサービスが中心だった。しかしファントークンは、スタジアムに足を運べないファンや地元の人たちも対象にし、イベントなどもデジタル上で展開するなど、より幅広い人たちと関わることができる。

「サガン鳥栖のファントークン購入者には、佐賀県在住の方だけでなく、他の地域にお住まいの方もたくさんいらっしゃいます。年齢層も非常に幅広く、サポーター歴が10年以上の方もいらっしゃれば、ここ数年でサポーターになった方もいらっしゃる。コアなサポーターはもちろん、ライト層にも楽しんでいただける企画を考えていく予定です」(同氏)

ファントークンに期待を寄せるサガン・ドリームス代表取締役の小柳智之氏 ©S.D.CO.,LTD.

 前出の奥氏は、ファントークンの意義を次のように考えている。

「ファントークンはファンのエンゲージメントを高めるものです。試合を応援しに行けばその履歴が残るため、発行者側は誰がコアなファンかが分かります。コアなファンにはより手厚く、ライト層にはより根強いコアなファンになってもらうためのマーケティング施策が展開できます。さらに、高級時計を親から子に託すイメージで、自らが培った『ファンの証(あか)し』を代々譲ったりすることもできるのです」(奥氏)

愛されるファントークンにしていきたい

 サガン鳥栖のファントークンを発行・運営するジャスミー代表取締役社長、佐藤一雅氏は次のように語る。

「ヨーロッパでは、ファンがお金を出すことがチームの強化につながる、という意識が強くあります。2021年にリオネル・メッシ選手がフランスのパリ・サンジェルマンに移籍したときは、移籍金の一部がファントークンで支払われ、ファンのお金でメッシがやってきたというストーリーが生まれました。サガン鳥栖のファントークンも、保有することでサガン鳥栖に貢献していると実感できるものにしていきたいですね」(佐藤氏)

ジャスミーが発行・運営する、サガン鳥栖公認ファントークンのアプリ画面

 サガン鳥栖では、遠方に住んでいるファントークン保有者にもスタジアムでの熱狂を伝えたいと、メタバース上での観戦イベント「メタバース応援サミット」を企画中。NFTは日常に浸透することで、もはや投資対象の域を超え、人とひとをつなぐ媒介になりつつあるのだ。

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提供:ジャスミー株式会社