
ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任して約1カ月。新大統領は意に沿わない企業やメディアをツイッターなどで厳しい言葉で恫喝してきた。グローバル企業は戦々恐々としている。トランプ政権で世界はどう変わるのか。AERA 2017年2月27日号では、「トランプに勝つ日本企業」を大特集している。
昨年11月の米大統領選を経て、日経平均株価は昨年末にかけて2万円台目前まで急上昇。さて今後は? 匿名を条件に現場で働くプロに聞いた。
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──トランプ政権発足以降のマーケットはいかがですか?
A:NYダウは最高値を更新し、日経平均は1万9千円台をキープしていますが、正直、東京市場はあまり盛り上がってはいません。
B:機関投資家が買い、上がっていた昨年11、12月とは対照的ですよね。今は外国人投資家と日本銀行くらいしか買っていない。個人投資家は完全に様子見。年金はポジション調整のために上値で売っているため、高値を更新するような勢いがない……。
A:11月9日の大統領選翌日から年末にかけてのマーケットが強烈すぎたんです。機関投資家は昨年6月にBrexit(ブレグジット)(英国のEU離脱)を経験していたから、大統領選前にポジションをほぼゼロになるぐらいまで減らしていました。そのなかで、Brexitに続く予想外のトランプ当選が確定したことで日経平均は大暴落してから急反発。機関投資家はこの急反発についていけなかったので、その後、高値を買いにいく動きが活発化してNYダウの上昇とともに日経平均は1万9千円台を回復したんです。けど、こんな相場に個人投資家はついてこられませんよね。
●機械仕掛けの市場
C:結果的には、Brexitのときと同じ値動きでしたよね。どちらも東京市場の昼休憩のときに趨勢が判明したため、現物株が売れず、先物主導で大暴落した。それも、先物はヘッジファンドのHFT(超高速取引)がマーケット・メーキングしているから、一定の値幅を下げたら自動的に売るというアルゴリズムに従って売り物が並んだうえに、ロスカットが発生して下げが加速しました。こうして先物と現物の価格が乖離した結果、後場に入ってそのサヤ取り(現物売り・先物買い)が発生して、底値を形成した。結局、投資家心理とはまったく関係のない値動きだったという印象です。