このような症状が出たとき、親はどうしたらいいのでしょう?
「ディスレクシアかな?と思ったら、まず眼科医で一般的な眼科検査を受けることをおすすめします。ここで遠視、弱視、両眼視(左右の目で見る力)など、目の機能として問題がないかを調べます。
機能として問題がない場合、正式にディスレクシアと判断するためには、『目の動き』『視覚での捉え方、記憶力』『音韻処理』『読みの速さ』『聴覚からの記憶と認知』『書字能力』など多岐にわたる検査をして、どの部分に原因があるのか詳しく調べることが必要になります」(松久先生)
しかし実際のところ、これらの細かい検査を実施できる眼科の数は非常に限られています。診察を受けるために何カ月先の予約を取らなければならないところも多いそう。松久先生は次のように言います。
「検査を実施している私が言うのもおかしいかもしれませんが、私は、ディスレクシアと正式に診断を得る必要は必ずしもないと思っています。なぜなら、親が知らなければならないことは、『わが子が正式にディスレクシアかどうか』ということより、『自分の子どもにはどのようなサポートが必要か』ということだからです。
とはいえ、不安な方も多いでしょう。比較的受診しやすいものに、小児科、自治体などで実施している『WISC-IV(ウィスク・フォー)』という知能検査があります。これは『児童用知能検査』ともいわれますが、『目で見て理解する力』『耳で聞いて作業する力』『筆記能力』など、学校の授業で使われる能力を見るためのテストです。このテストを受けることで、お子さんが不得意な部分、そして得意な部分がわかり、親は何をすべきか、ひとつの目安を知ることができます」
では、わが子がディスレクシアかも?となったら、どのようなサポートが必要なのでしょうか?
「ディスレクシアの子は、他の子のように自然に文字と音が対応するようにはなりません。ですから、文字と音がすでに一緒になっている教材(『マルチメディアDAISYの教科書』など)を使うことが、大きな助けになります。マルチメディアDAISYの教科書は、ディスレクシアの診断がなくても『公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会』に症状を申請すれば無料で提供されます。公立小学校中学校の教科書に対応しています。できるだけ早く、このような教材への変更が必要です。
親ができることとして、文章の文節ごとにスラッシュをいれる、先に読んであげる、文節ごとに読むなどがあります。早めに先生に相談して、漢字の宿題では『とめ・はね・はらい』など正確に書くことに固執せず、正しく使えることを目標とするようにシフトしたほうがいいでしょう」(松久先生)