7月2日に投開票された東京都議会議員選挙(都議選)は、小池百合子都知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」が躍進し、公明党などと合わせた小池知事の支持勢力が全議席の過半数を獲得。一方、小池知事と対立する自民党は議席数を過去最低にまで減らし、惨敗する結果となった。小池知事が自分の意見を都政に反映させやすい体制となったが、課題は少なくない。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞社会部の岡雄一郎さんの解説を紹介しよう。

■自民党批判の受け皿になった

 都民ファーストの会が圧勝した理由は、小池知事の訴えが支持を受けたことに加えて、自民党(自民)に対する批判が強まり、その受け皿になったからだ。小池知事は選挙戦で、都議会の自民に対して、一部の有力議員だけが決めた方針で動く「ボスによる政治」などと批判。一方、都民ファーストの会からは医師や歌手、会社員ら議員経験のない人たちを数多く立候補させ、「古い議会から新しい議会へ」と訴えた。

 これに対し、自民は、学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡る政府の対応に批判が上がるなか、閣僚の失言や自民衆議院議員の暴言・暴行疑惑が重なり、苦戦。朝日新聞社の出口調査では、全体の26%だった「自民を支持する」と答えた層のうち、自民候補に投票した人は67%にとどまった。選挙前に都議会で最大の議席数を持っていた自民党は、選挙後には都民ファーストの会、公明党に次ぐ第3勢力に転落した。

■方針だけで何も決まっていない築地市場移転問題

 この選挙結果を受けて、小池知事は「東京が抱えるさまざまな課題に果敢に挑戦していきたい」と意気込むが、難しい課題もある。一つは、築地市場の移転問題だ。

 小池知事は就任直後の昨年8月、その年の11月に予定されていた築地市場の豊洲市場への移転について、「豊洲市場の土壌汚染対策の安全性等を確認する」などとして延期。確認作業を続けた後、都議選直前の今年6月に豊洲移転を決め、公表した。同時に「築地市場の跡地を再開発する」という方針も示したが、それにかかる費用や日程は未定で、そもそもどんな内容で再開発するのかも決まっていない。都議選直前にあやふやな中身のまま公表した小池知事の姿勢について、それまで「(方針を)決められない知事」と批判していた自民の都議らからは「選挙目当ての方針公表だ」とも指摘された。

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岡雄一郎
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