沖ノ島が国内21件目の世界遺産に登録される。文化遺産としては17件目で、残り4件は、知床、白神山地、屋久島、小笠原諸島の自然遺産だ。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、サイエンスライター・上浪春海さんの、4つの世界自然遺産のうち3カ所についての解説を紹介しよう。

【屋久島(鹿児島県)】
■“垂直の旅”で植生の変化を体感
屋久島は、南国の暖かい島と思いがちだが、最高峰の「宮之浦岳」は標高が1936メートルもあり、冬には雪も降る。この標高差が海沿いの低地から山地にわたって変化に富む気候をもたらし、屋久島には、南九州の暖地から北海道の寒冷地にまで育つような多様な植生(※)が垂直に分布する。ほかには見られない「固有種」も多い。
屋久島の自然に触れるために、南九州でも北海道でも快適に過ごせる服装を準備しよう。縄文杉を見にいくなら、森の中を歩くので虫に刺されないよう長袖のシャツと長ズボンは必須。防寒具のほか、上下に分かれた雨具も欠かせない。というのも、屋久島は「月のうち 35日は雨」といわれるほど雨が多いからだ。年間降水量は平地で約4500ミリと東京の約3倍、山地では9800ミリに達する地域もある。雨に打たれるのも、屋久島の醍醐味(だいごみ)だ。
※植生=ある地域に生育している植物の集団の状態。
【知床(北海道)】
■流氷がもたらす豊かな生態系
ヒグマやエゾシカが原生林を歩き回り、シマフクロウやオオワシなどの「猛禽類(もうきんるい)」が空を舞う。沖合にはクジラが回遊し、サケ類が産卵のため川をさかのぼる。世界でもめずらしい知床の自然の豊かさは、春先にサハリン北部の沿岸などからオホーツク海を渡ってくる流氷がもたらす。流氷が運んできたプランクトンが魚に栄養を供給し、魚はアザラシやヒグマ、猛禽類などの大型動物のえさとなり、独特の生態系が形づくられている。美しくそびえる城は見せびらかすため。
<メモ>
温暖化の影響で流氷が減少すると、生態系が壊れ、知床が世界自然遺産でなくなるおそれがある。
【小笠原(東京都)】
■ここにしかいない生き物の宝庫
小笠原諸島は4400万年前にできた火山島で、一度も大陸とつながったことがない。そのため、海流や風に乗ってこの島々に漂着した動植物は、似たもの同士で交わることなく、独自の進化をとげて固有種となっている。植物の約30%、昆虫の約30%、陸産貝類(カタツムリの仲間)の約95%(約100種)が固有種だ。クジラやイルカ、ウミガメなど海の生き物を間近で見るチャンスにも恵まれている。
<メモ>
無人島への上陸やホエールウォッチング(クジラの観察)などはツアーに申し込もう。
(解説/サイエンスライター・上浪春海)
※月刊ジュニアエラ 2017年7月号より

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